投稿日:2026.09.07 最終更新日:2026.09.07
事前確定届出給与の支給で法人税も社会保険料も下がる?経費にできる3つの条件
「今期は業績が良かったから、役員にも少し多めに払いたい」
そう思っても、役員への賞与は原則として経費に落とせません。
「せっかく利益が出たのに……」とがっかりされるかもしれませんが、実は例外があります。事前に「いつ・いくら払うか」を税務署へ届け出ておけば、役員賞与も経費にできるのです。
この仕組みを「事前確定届出給与」と呼びます。
名前は聞いたことがあるという方は多いのですが、実際に活用できている会社はそう多くありません。うまく使えば、法人税が下がるだけでなく、給与と賞与のバランス次第で社会保険料の負担まで減らせる可能性があります。
「そんなにお得なら、すぐにでもやりたい」と思うかもしれません。ところが、注意すべき点もあります。届け出た内容と実際の支払いがずれれば、経費にできるはずだった賞与が、経費として認められなくなってしまうのです。
ここでは、制度の仕組みから手続きの流れ、そして社会保険料への影響まで、導入前に知っておくべきポイントを整理します。
この記事でわかること
- 役員賞与を経費にできる「事前確定届出給与」の仕組み
- 決定から届出、支給、支給後までの流れとスケジュールの組み方
- 給与と賞与の配分で、法人税と社会保険料がどう変わるか
- 1円・1日のずれや高すぎる金額で、経費と認められなくなるリスク
- 導入する前に確認したい、資金繰り・毎年の手続き・将来の年金との兼ね合い
南 彰悟
1986年3月6日生まれ。大分県出身。早稲田大学を卒業後、25歳で公認会計士試験に合格。大手監査法人に8年程勤める。2020年税理士登録。イデア総研税理士法人の副代表として活動する。
事前確定届出給与とは?

ひとことで言うと、「いつ・いくら払うかを先に税務署へ届け出ておくことで、役員賞与を経費にできる制度」です。
役員賞与を会社の経費(損金)にできる例外制度
まずは前提から整理します。会社が払ったお金のうち、税務上の経費として認められるものを「損金」といいます。経費が増えれば会社の利益が減り、利益にかかる法人税も減ります。
しかし、役員賞与は原則としてこの経費には含まれません。
だからといって、役員に賞与を出すと税金面で損をするのかといえば、実は抜け道があります。
支給する前に税務署へ届け出ておけば、役員賞与も経費として認められるのです。これが「事前確定届出給与」という制度です。国税庁の公式Q&Aでも、経費にできる役員給与の一つとして挙げられています。
法律の言葉は少し硬いのですが、要するにルールは2つだけです。
- いつ払うかを先に決めておく
- いくら払うかを先に決めておく
「いつ」と「いくら」を先に確定させて、そのとおりに払う。この後に出てくる手続きも条件も、すべてこの2つにつながっています。
事前確定届出給与は毎月の役員給与と組み合わせて使う
ここまで賞与の話をしてきましたが、役員が受け取るお金には「毎月の給与」もありますよね。
この2つを合わせたものが「役員報酬」です。主な支給方法は次の2つに分かれます。
- 定期同額給与:毎月同じ額を払い続ける方式。ほとんどの中小企業がこの方式で設定
- 事前確定届出給与:先に届け出た日に、届け出た額の賞与を払う方式
実はこれ、どちらか一つを選ぶ必要はなく、組み合わせて使うことができます。イデア総研税理士法人でも、「毎月の給与は定期同額給与で固定し、業績に応じて事前確定届出給与で賞与を出す」という組み合わせをよくご提案しています。
顧問税理士に相談するときは、「2つを組み合わせた設計にしたい」と最初に伝えてみてください。毎月の給与は定期同額で安定させつつ、業績に応じた上乗せ分だけを事前確定届出給与にする方が、資金繰りの見通しも立ちやすく安全です。
役員報酬の決め方や株主総会の手続きは、以下の記事にまとめています。あわせてご覧ください。
役員報酬の決め方で損をしない|設立3カ月以内に確認すべき手順と金額設計
会社を設立したばかりの社長が、最初に迷うことのひとつが役員報酬の設定です。「いつまでに決めればいいか」「いくらが正解か」が分からないまま、時間だけが過ぎていってしまう。 ところが、役員報酬には「設立後3カ月以内」という期限があります。この期限を過ぎてしまうと、自分への報酬が会社の経費として税務署に
事前確定届出給与の決定から支給後まで、何をどの順で進める?

導入を決めたら、以下の4つのステップで手続きを進めます。
- 届出期限を確認し、逆算してスケジュールを組む
- 支給額と支給日を決めて、株主総会で決議する
- 届出書を税務署へ提出する
- 届出どおりに支給し、支給後の手続きをする
Step 1|届出期限から逆算して手続きの日程を組む
まず最初にやるべきなのが、届出期限の確認作業です。
期限は次の2つのうち、いずれか早い方の日付となります。
- 株主総会で決議した日から1ヶ月後
- 事業年度が始まった日から4ヶ月後
たとえば3月決算の会社(事業年度は4月1日から)が、5月20日に決議したとします。
- 決議日から1ヶ月後 → 6月20日
- 事業年度開始から4ヶ月後 → 7月31日
早いほうが優先されるため、このケースでは6月20日がタイムリミットになります。
ここで「決議日から1ヶ月」だけを覚えていると少し危険です。決議が遅れると「事業年度開始から4ヶ月」のほうが先に来て、気づかないうちに期限を過ぎてしまうことがあります。必ず両方を当てはめて確認してください。
ちなみに、会社を作ったばかりの初年度には別の特例ルールがあります。設立初年度の場合、届出の期限は決議日などにかかわらず「設立の日から2ヶ月を経過する日」です。会社を立ち上げてすぐに役員賞与を出したいと考えているなら、設立直後の忙しい時期でも期限を過ぎてしまわないよう、早めに準備しておきましょう。
期限が決まったら、そこから逆算して4ステップそれぞれの日程を決めていきます。株主総会後には議事録の作成も必要なので、その時間もスケジュールに入れておきましょう。
Step 2|支給額と支給日を決めて株主総会で決議する
支給額と支給日は、次の3つを見ながら決めます。
- 法人税(いくら経費にできるか)
- 社会保険料(配分でどう変わるか)
- 資金繰り(支給日に本当に払えるか)
ここで注意したいのは、「あとで変更すればいいや」と考えないことです。
一度届け出ると、原則として金額も日付も変更できません。無理なく払える金額と、振り込める日付を慎重に見極めることをお勧めします。
内容が固まったら、株主総会で決議をとります。一人社長の会社であっても、この手順は省略できません。
「株主は自分一人だから、頭の中で決めればいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、決議と議事録は「会社として正式に決めた証拠」として残す必要があります。証拠がないと、税務調査のときに経費として認めてもらえないリスクがあります。
とはいえ、実際に集まる必要はありません。株主全員が書面で同意すれば、決議があったとみなされます(みなし決議)。
そもそも議事録は、会社法で作成と保管が義務付けられている書類です。
主な記載項目は次の5つに分かれます。
- 開催日時
- 場所
- 出席者
- 決議事項
- 署名
ゼロから作るのは大変なので、インターネット上にあるテンプレートなどを活用するとスムーズです。
ここで一つ注意したいのが、届出期限のカウント方法です。届出期限の「決議日から1ヶ月」は、この決議の日から数え始めます。つまり決議は、スケジュール全体の起点でもあるのです。
株主総会の開き方など、一般的な手続きは以下の記事でまとめています。
役員報酬の決め方で損をしない|設立3カ月以内に確認すべき手順と金額設計
会社を設立したばかりの社長が、最初に迷うことのひとつが役員報酬の設定です。「いつまでに決めればいいか」「いくらが正解か」が分からないまま、時間だけが過ぎていってしまう。 ところが、役員報酬には「設立後3カ月以内」という期限があります。この期限を過ぎてしまうと、自分への報酬が会社の経費として税務署に
Step 3|決めた内容を届出書と付表に書いて税務署へ提出する
決議した内容を、届出書に書いて税務署へ提出します。
必要な様式は、国税庁の手続案内「C1-23 事前確定届出給与に関する届出」に掲載されています。
- 届出書
- 記載要領(書き方の説明)
- 付表1(現金で払う場合)
- 付表2(株式で払う場合)
役員に現金で賞与を払う一般的なケースなら、使うのは届出書と付表1です。
書類を作るときのポイントは、議事録を手元に置き、日付と金額を正確に書き写すことです。ここで内容がずれてしまうと、後々「届出と支給が一致していない」と指摘される原因になってしまいます。
Step 4|届出どおりに支給し、支給後の手続きを済ませる
税務署に書類を出して一安心……と言いたいところですが、まだ終わりではありません。
支給時と支給後に行うことは4つあります。
- 届け出た金額・日付のとおりに振り込む
- 源泉所得税(給与から天引きする所得税)を計算し、期限までに納める
- 年金事務所へ「被保険者賞与支払届」を提出する
- 給与明細や振込記録などを残しておく
源泉所得税は毎月の給与とは計算方法が異なり、賞与用の税額表を使って計算しなければなりません。納付期限は、原則として支払った月の翌月10日です。
納期の特例を受けている会社は、期限が次のように変わります。
- 1月から6月の支払分 → 7月10日
- 7月から12月の支払分 → 翌年1月20日
賞与の支給が年3回以下の場合は、「被保険者賞与支払届」を支給日から5日以内に提出する必要があります。期限が非常に短いため、支給日が決まった時点で書類を準備しておくのが無難です。
そして、記録も忘れずに残しておきましょう。給与明細や通帳の振込履歴が、「確かに届出どおりに支給した」という何よりの証明になります。
出典:No.2505 源泉所得税の納付期限と納期の特例|国税庁
ここまでが手続きの全体像です。決議から届出、そして実際の支給まで、手順が抜け落ちると、せっかくの賞与が経費として認められなくなる可能性があります。
役員報酬を賞与に振り分けると、法人税と社会保険料の負担はどうなる?

ここからが一番気になるお金の話です。実は同じ年収でも、「毎月の給与だけ」で受け取るか、「毎月の給与+賞与」に分けるかで、会社が負担する金額は変わってきます。
役員賞与を経費にできれば法人税の負担を抑えられる
届出どおりに支給した賞与は、経費として計上できます。中小企業の場合、利益のうち年800万円以下の部分にかかる法人税率は15%です。
たとえば200万円を経費にできれば、法人税は約30万円減ります。事前確定届出給与を使うかどうかで、法人税だけでもこれだけの差が生まれます。
毎月の報酬を賞与に振り分けると社会保険料が下がる場合がある
法人税の負担が減るのは大きなメリットですが、もう一つ考慮すべき負担があります。社会保険料です。
社会保険料は、毎月の給与にも賞与にも同じ料率がかかります。それなら、給与を賞与に振り替えてもトータルの金額は変わらない気がしますよね。
それでも「負担が下がるケースがある」のは、賞与にかかる保険料には上限が設定されているからです。
なお、上限を超えた部分は将来の年金額にも反映されません。詳しくは後ほど触れます。
- 厚生年金:1回の支給につき150万円まで
- 健康保険:年度の累計573万円まで
-
子ども・子育て支援金:年度の累計573万円まで(健康保険と同じ上限)
つまり、毎月の給与を少し下げて賞与に大きくまとめ、その賞与額が上限を突き抜ければ、超えた分には保険料がかからなくなります。結果として、トータルの負担額を抑えられるという仕組みです。
ただし、上限に届かない賞与への振り替えでは料率が同じため下がりません。また、年4回以上の支給は社会保険上、毎月の給与と同じ扱いになります。
出典:保険料額表|日本年金機構
出典:令和8年度保険料額表(大分県)|全国健康保険協会(保険料率は都道府県ごとに異なります)
法人税と社会保険料の合計負担は受け取り方の設計次第で変わる
ここまでの話を整理しましょう。法人税は、賞与が経費になった分だけ下がります。一方の社会保険料は、給与と賞与のバランス次第で下がることもあれば、変わらないこともあります。
公表されている料率をもとに、一般的な比較の枠組みを整理してみました。(表の料率は令和8年度のものです。)
| 比べる項目 | 毎月の給与だけで受け取る | 一部を賞与に振り分ける |
|---|---|---|
| 経費(損金) | 毎月分が損金になる | 毎月分に加え、届出どおりなら賞与も損金になる |
| 法人税 | 同じ税率が適用される | 賞与分も損金になり、課税所得がその分減る |
| 厚生年金保険料 | 標準報酬月額×18.3%(労使合計、折半後は2分の1ずつ) |
標準報酬月額×18.3%+標準賞与額×18.3%(労使合計、標準賞与額は1回の支給につき150万円まで) |
| 健康保険料(大分県・介護保険なしの例) |
標準報酬月額×10.08%(労使合計、折半後は2分の1ずつ)
|
標準報酬月額×10.08%+標準賞与額×10.08%(労使合計、標準賞与額は年度累計573万円まで) |
| 子ども・子育て支援金 |
標準報酬月額×0.23%(労使合計)
|
標準報酬月額×0.23%+標準賞与額×0.23%(労使合計、標準賞与額は年度累計573万円まで) |
| 月額を下げた影響 | ー | 標準報酬月額の等級が下がる場合がある |
ただし、どの配分が一番有利になるかは、この表だけでは判断が難しいところです。実際の金額を当てはめて計算することで、具体的な影響が見えてきます。
「税金が減るから得だ」と思い込んでいたら、社会保険料を含めるとかえって損をしていた……というケースも起こり得ます。税務は税理士、社会保険は社労士と別々に相談していると、こうした逆転現象に気づきにくいのが実情です。
イデア総研税理士法人はグループ内に税理士法人と社会保険労務士法人を持つため、法人税と社会保険料を同時に計算した試算を、一括でお出しできます。
最適な振り分け方は、役員報酬の水準や家族構成、都道府県ごとの保険料率によっても変わってきます。まずは自社の数字でシミュレーションしてみることをお勧めします。
役員報酬を変えるタイミングによって有利不利が逆転するケースについては、別の記事にまとめています。
役員報酬の変更タイミング|いつ変えると得か・損か、決算月別スケジュールと実務ポイント
「役員報酬っていつまでに変えればいい?」「そもそも今の時期でも変えられるの?」 「今期こそ役員報酬を変えよう」と思ったとき、こんな疑問が出てきますよね。 役員報酬は、好きなタイミングで自由に変えられるわけではありません。税法上、変更できる時期は事業年度が始まってから3ヶ月以内と決まっていて、この
事前確定届出給与を支給するにあたって守るべき3つの条件

ここからは、せっかくの賞与が経費として認められなくなる事態を防ぐための条件を見ていきます。事前確定届出給与は、ルールから外れると経費として認められない場合があるため、注意が必要な制度です。
届出額と実際の支給額を一致させる
届け出た金額と実際に振り込んだ金額。これらが違っていると、原則として賞与の全額が経費になりません。差額分だけではなく、全額が対象になります。
「なぜそこまで厳しいの?」と思うかもしれませんが、理由はシンプルです。この制度が「事前に確定させた額を払う」という約束で成り立っているため、違う額を払った時点でその前提が崩れてしまうからです。
「業績が悪化して、予定通り払えなかった」という場合も、原則として例外扱いはされません。だからこそ決議の段階で、「支給日に無理なく払える額かどうか」を慎重に見極めておく必要があります。どうしても払えなくなったときに取れる手段は、後ほどのコラムで触れます。
届出日と実際の支給日を一致させる
金額だけでなく、日付のずれにも注意が必要です。届け出た日と実際の支給日がずれてしまうと、やはり全額が経費として認められなくなります。
ここでよく落とし穴になるのが、支給予定日が土日祝日に重なってしまうケースです。銀行が休みだと振込日は前後にずれますが、「休日だからずれてもOK」という明確なルールは国税庁から示されていません。
はっきりした答えがない以上、わざわざ危険な橋を渡る必要はありません。届出の前にカレンダーと銀行の営業日を確認し、確実に振り込める日を支給日にしておきましょう。土日祝日にかかりそうな場合は、届出の段階で顧問税理士に相談し、安全な日付で届け出ることをお勧めします。
同業他社と比べて不相当に高い役員賞与を設定しない
金額と日付のルールを守っても、そもそも設定した賞与が高すぎる場合は、その超過分が経費として認められません。国税庁も「不相当に高額な部分の金額は損金の額に算入されない」と明言しています。
高すぎると判断されると、超えた部分が経費にならないうえ、加算税・延滞税という追加の税金がかかることもあります。
税務署が「高すぎないか」を判断するとき、主に見ているのは次の3点です。
- 役員の実際の仕事内容
- 会社の収益
- 同業他社の平均
「〇〇万円までなら大丈夫」といった明確な基準が存在するわけではありません。節税のために賞与を大きく設定したい気持ちはわかりますが、常識的な範囲に収まっているかどうかも判断のポイントになります。
【コラム】業績悪化で届出どおりに支給できなくなったら?

「業績が落ちて資金繰りが苦しいから、予定していた賞与を減らしてもいいですか?」
実務をしていると、こうした相談を受けることがあります。
これは事前確定届出給与の「変更届出」という手続きにあたります。毎月の給与(定期同額給与)を期中で減額するルールとは別の話なので、混同しないよう注意が必要です。
結論から言うと、会社の判断だけで減額することはできません。金額や支給日を後から変えるには、正当な理由があり、かつ期限内に「変更届出」を出す必要があります。ただし、この「業績悪化」として認められるハードルは高く、「最近売上が落ちてきて……」といった程度では認められないのが現実です。
変更が認められる可能性があるのは、役員の職務内容が大きく変わった場合(臨時改定事由)や、経営状況が著しく悪化した場合(業績悪化改定事由)などに限られます。いずれのケースでも変更届出の提出が必要であり、提出期限も決まっています。
もし「予定通り払うのは厳しい」と感じたら、自己判断で動かず、支給日が来る前に顧問税理士へ相談してみてください。打てる手立てがないか一緒に探りましょう。
事前確定届出給与を取り入れる前に確認すべき3つのこと

ルールを守れるとしても、この制度には会社によって向き不向きがあります。導入に踏み切る前に、以下の3つをクリアできるか確認しておきましょう。
支給月に賞与と社会保険料を払えるだけの資金が確保できるか
当たり前のことですが、約束どおりに賞与を払うには、支給月までに現金を確保しておく必要があります。特定の月に大きな支出が発生するため、資金繰りへの影響も考慮しなければなりません。
しかも、必要なのは賞与の支給額だけにとどまりません。会社が負担する社会保険料の分も含めて、手元に資金を準備しておくことが求められます。
賞与の割合を増やした結果、いざ支給月になって資金が不足してしまっては本末転倒です。「いつまでに、いくら現金を用意するのか」を、あらかじめ計画しておくことをお勧めします。
毎年の決議・議事録・届出に継続して対応できるか
この制度は、一度税務署に出して終わり、というわけにはいきません。制度を使い続けるかぎり、決議をして、議事録を作り、期限内に届け出るという一連の手間が毎年発生します。
「去年出したから今年は不要」とはなりません。社長一人の会社であっても手続きを省略することはできず、毎回書類をそろえる必要があります。
こうした事務作業を毎年コツコツ続けられるかどうかも、導入を決める大事なポイントになります。
社会保険料が下がると将来の年金や給付も変わることを理解しているか
社会保険料は、単なる会社のコストではありません。将来受け取る年金や、病気で働けなくなったときの給付金のベースにもなっています。目先の保険料を下げた結果、いざというときの給付まで減ってしまう可能性があるのです。
ただし、何でもかんでも減るわけではなく、給付の種類によって影響の出方は違います。
まず年金についてですが、厚生年金は「毎月の給与」と「賞与」の両方をもとに計算されます。上限の範囲内で賞与に振り分けるだけなら、将来の年金額への影響は大きくありません。
上限(厚生年金は1回あたり150万円)を超えた分は保険料がかからない代わりに、年金額にも反映されません。保険料を抑えるために賞与を大きく寄せるほど、将来受け取る年金は減っていきます。
一方で気をつけたいのが「傷病手当金」です。これは病気やケガで働けなくなったときに受け取れる給付金ですが、こちらの計算ベースになるのは「毎月の給与」のみとなっています。
つまり、毎月の給与を下げて賞与に大きく寄せてしまうと、万が一のときに受け取れる手当が少なくなる可能性があります。出産手当金なども同じ仕組みです。
なお、ここで挙げたメリットや注意点は、いずれも現行の制度を前提としています。法令改正によって、将来的に取扱いが変わる可能性がある点は頭の片隅に置いておいてください。
出典:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会
まとめ:法人税と社会保険料の負担を試算して、自社に合った支給方法を選ぼう!
最後に、この記事の要点を振り返っておきましょう。
この記事のポイント
- 事前確定届出給与を使えば、役員賞与も会社の経費にできる
- 期限から逆算し、決定・決議・届出・支給・支給後の手続きを順番に進める
- 同じ年収でも、給与と賞与の配分で法人税と社会保険料の合計負担が変わりうる
- 届出額・届出日と1円・1日でもずれると、原則として全額が経費にならない
- 高すぎる賞与は経費にならず、加算税・延滞税が発生することがある
- 資金繰り・毎年の手続き・将来の年金との兼ね合いで判断する
事前確定届出給与が「自社にとって本当に得になるか」は、実際の数字を当てはめてみないことにはわかりません。法人税が減っても社会保険料が上がって総合的に損をしてしまうこともあれば、うまく設計して両方の負担を抑えられるケースもあります。
イデア総研税理士法人は、グループ内に税理士法人と社会保険労務士法人の両方を構えています。そのため、「税金」と「社会保険料」の両方を見据えた試算を一括でお出しすることが可能です。面倒な届出期限の逆算から議事録の作成、支給後の手続きまで、窓口を分けることなくご相談いただけます。
大分・福岡エリアで「うちの会社の場合はどうなる?」と気になった方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。