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役員社宅で年間数十万円の節税|経費にできる費用・賃料相当額の計算を税理士が解説

木製の積み木に書かれた「社宅」の文字と、電卓やミニチュアの家が置かれたデスク周り

「役員社宅にすると節税になる」と聞いても、住宅手当と何が違うのか、自社でも使えるのか、手取りがどれくらい変わるのかまでは分かりにくいところです。

特に一人法人のオーナー役員は、今住んでいる家の契約名義を法人に変えるだけで、年間数十万〜百万円単位の節税につながる場合があります。

一方で、毎月いくら会社へ支払うのか、どの費用まで経費にできるのか、どんな書類を残すのかを曖昧にしたまま進めると、税務調査で否認されるリスクがあります。

役員社宅は、仕組みを正しく理解して導入すれば効果の大きい制度です。反対に、名義・支払い・計算・書類のどれかを外すと、節税策として機能しません。

この記事を読めば、こんな悩みが解決します
  • 所得税・住民税・社会保険料が同時に下がる仕組みとシミュレーション
  • 経費にできる費用とNG費用の整理(家賃はOK・光熱費はNG)
  • 賃料相当額の計算方法(小規模・通常・豪華の3区分の判定基準)
  • 役員社宅が認められる3つの要件と4つの導入ステップ
  • 税務調査で指摘されやすい3つのミスと対策
この記事を書いた人
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南 彰悟

1986年3月6日生まれ。大分県出身。早稲田大学を卒業後、25歳で公認会計士試験に合格。大手監査法人に8年程勤める。2020年税理士登録。イデア総研税理士法人の副代表として活動する。

役員社宅で手取りはどのくらい増える?

一万円札の上に「手取りUP!」の文字が書かれた積み木が置かれ、電卓やペンが添えられた、手取り額増加や収入アップのイメージ画像

役員社宅を考えるとき、最初に押さえたいのが住宅手当との違いです。どちらも会社が住宅費を支援する制度ですが、税金の扱いは大きく変わります。

住宅手当は、役員報酬に上乗せして支給する方法です。会社の経費にはなりますが、役員個人にとっては「給与をもらった」のと同じ扱いです。所得税・住民税・社会保険料の計算対象に含まれるため、支給額が増えても手取りはほとんど増えません。

一方、役員社宅は会社が物件を契約し、役員に貸し出す仕組みです。役員が毎月会社に支払うのは、税務上のルールで計算した「賃料相当額」という少額だけ。家賃10万円の物件(床面積132㎡以下の一般的なマンション等)なら、役員の自己負担は1〜2万円程度で済む場合があります。残りの8〜9万円は会社の経費になり、役員の給与とはみなされません。

住宅費の自己負担を大きく下げられるだけでも効果は十分ですが、役員社宅のメリットはそれだけではありません。

所得税・住民税・社会保険料が同時に下がる

役員社宅の節税効果は、現金報酬の一部を社宅の提供に切り替えることで生まれます。

現金報酬が下がると、所得税・住民税の計算対象となる「課税所得」が下がります。所得税は累進課税のため、課税所得の水準によっては適用税率が変わることも。

所得税と同様、社会保険料も現金報酬をもとに計算されます。たとえば月10万円分を社宅に切り替えた場合、会社・役員双方の保険料が年間数万〜十数万円の削減になることがあります。

役員側だけでなく、会社の法人税にも効果があります。会社が負担する家賃(実際の家賃から賃料相当額を引いた差額)を経費として計上でき、課税利益が下がるぶん法人税の削減にもつながります。

項目 住宅手当 役員社宅
所得税・住民税 増加(全額が給与課税) 減少
社会保険料 増加 減少
法人税 会社の経費になる 会社の経費になる
役員の節税効果 なし あり(所得税・社会保険料・法人税の三重効果)

家賃10万・15万・20万円の節税シミュレーション

役員社宅は、会社の規模を問わず使える制度です。特に一人法人では、自宅を法人契約に切り替えるだけで導入できる場合があります。

以下は「役員報酬月額80万円・大分県在住・RC造60㎡」を前提にした試算です(国税庁No.2600・協会けんぽ大分県令和8年度保険料率に基づく試算)。

家賃(月額) 役員自己負担(賃料相当額目安) 会社負担 年間節税額の目安(個人の税負担軽減分)
10万円 約1.2〜1.5万円 約8.5〜8.8万円 約50〜60万円
15万円 約1.5〜2万円 約13〜13.5万円 約70〜85万円
20万円 約2〜2.5万円 約17.5〜18万円 約95〜110万円

※年間節税額は、所得税・住民税・社会保険料(個人負担分)の軽減額の目安です。実際の効果は、役員報酬の水準・家族構成・地域の社会保険料率によって変わります。法人税の削減分は含めていないため、会社側の効果を合わせるとさらに大きくなります。

役員報酬を下げると手取りも減るように見えますが、社宅に切り替える場合は見方が変わります。現金報酬の減少分より、住宅費の軽減と税金・社会保険料の削減額が上回れば、実質的な手取りは増加します。

家賃はOK、光熱費・駐車場は?経費の線引きを確認する

日本の一万円札の上に置かれた「経費」と書かれた木製ブロック。経理、会計、支出管理のイメージ

役員社宅を導入しても、住宅に関する費用をすべて会社の経費にできるわけではありません。家賃は経費にできますが、光熱費や通信費は原則として役員個人の生活費に近い扱いになります。

判断基準は、「法人が契約して支払う費用か」「役員個人の生活費に近い費用か」です。光熱費のように日常生活で使う費用を会社が負担すると、役員への給与の一部とみなされ、かえって税負担が増える場合があります。

費用の種類 経費計上 補足
月額家賃 全額損金算入(役員から賃料相当額を徴収)
仲介手数料・礼金・更新料 法人が支払う場合
火災保険料・管理費 法人名義が前提
敷金・保証金 退去時に返還されるため経費ではなく資産(敷金勘定)として計上
電気・ガス・水道代 × 役員への現物給与として課税
通信費・駐車場代 × 個人生活費扱い(例外あり)

駐車場代は原則として経費になりません。ただし、住宅の賃貸借契約に含まれており、車を持っているかどうかに関係なく割り当てられるスペースであれば、家賃の一部として扱える場合があります。判断に迷うときは、税理士に確認しておく方が安全です。

法人が支払う家賃は会社の経費になりますが、役員本人から賃料相当額を受け取る必要があります。会社に残る実質的な負担は「家賃 − 賃料相当額」の差額部分です。

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自分の住宅はどの区分?賃料相当額の計算チャート

ビジネス書類のデータ表の上に置かれた電卓とペンの、経理や分析業務を象徴するイメージ

役員が毎月会社に支払う金額は、住宅の広さと種類で変わります。計算方法は「小規模住宅・小規模でない住宅・豪華住宅」の3区分です。

判定で見るのは、建物の構造と床面積です。木造か鉄筋コンクリート造かによって、小規模住宅と判定される床面積の上限が変わります。

区分 判定基準 賃料相当額の水準
小規模な住宅 木造など(法定耐用年数30年以下):132㎡以下/RC造など(法定耐用年数30年超):99㎡以下 市場家賃の10〜20%程度(節税効果がもっとも大きい)
小規模でない住宅 上記の基準を超える住宅 家賃の50%程度(節税効果が薄まる)
豪華住宅 床面積240㎡超、またはプール付きなど特別な設備がある物件 実勢家賃(市場相場)が自己負担額になる

混乱しやすいのが、「法定耐用年数30年以下か、30年超か」という判定です。一般的な木造住宅の法定耐用年数は22年なので、床面積132㎡以下なら小規模住宅に該当します。RC造マンションは法定耐用年数47年のため、99㎡以下が基準です。

一般的な賃貸マンション(RC造・専有面積60〜80㎡)は、多くの場合「小規模住宅」に該当します。ただし、共用部分の床面積をあん分して加算する場合もあるため、判断に迷う物件は税理士に確認しておくと安心です。

小規模住宅の計算式

小規模住宅の場合、賃料相当額は市場家賃の10〜20%程度になることが多くあります。冒頭で触れた「家賃10万円でも自己負担1〜2万円」という金額は、国税庁タックスアンサーNo.2600に基づく次の計算式から算出します。

1か月あたりの賃料相当額は、以下1〜3の合計です。

  1. (建物の固定資産税課税標準額)× 0.2%
  2. 12円 ×(床面積㎡ ÷ 3.3)
  3. (敷地の固定資産税課税標準額)× 0.22%

ここで重要なのは、この計算式に「毎月の家賃」は使わないという点です。使うのは「固定資産税課税標準額」という、市区町村が決めた建物・土地の評価額です。毎月支払っている家賃とは別の数字で、固定資産税の課税明細書に記載されています。

固定資産税課税標準額は、市区町村の窓口で「固定資産評価証明書」を取得すれば確認できます。賃貸物件でも、法人名義で申請できます。

たとえば建物の固定資産税課税標準額500万円・敷地200万円・床面積70㎡の場合、① 10,000円 + ② 254円 + ③ 4,400円 = 14,654円 / 月です。

市場家賃10〜12万円の物件でも、自己負担が1.5万円程度に収まることが分かります。

固定資産税の課税標準額は原則3年ごとに見直されます。導入後も定期的に計算しなおし、自己負担額を更新しておきましょう。

自己所有の物件(持ち家)を役員社宅として使う場合もあります。ただし、計算方法や手続きは賃貸物件と違います。持ち家の社宅化を検討している場合は、別途税理士に確認することをおすすめします。

小規模でない住宅の計算式

床面積が小規模住宅の基準を超える場合、次のいずれか多い方が賃料相当額になります。

  • 会社が家主に支払う家賃の50%
  • 小規模住宅と同様の固定資産税課税標準額ベースの算式で計算した金額

小規模でない住宅では、少なくとも家賃の50%を役員が自己負担する考え方になります。小規模住宅と比べて自己負担額が上がるため、節税効果は薄くなります。物件を選ぶ前に小規模住宅に収まるかを見ておくと、自己負担額を抑えやすくなります。

豪華住宅の場合

豪華住宅に該当すると、ここまでの計算式は使えません。「通常支払うべき使用料に相当する額(実勢家賃)」がそのまま賃料相当額になります。節税効果はほとんど出ないため、物件選定の段階で豪華住宅に当たらないか確認しておきましょう。

自社の社宅は要件を満たしている?3つのチェックと導入ステップ

チェックが入った用紙と拡大鏡、緑の葉を添えた、点検や分析・確認作業のイメージ

役員社宅が認められる3つの要件

役員社宅として税務上認められるには、形式面の要件をそろえる必要があります。特に重要なのは、次の3点です。

  • 賃貸借契約の借主名義を法人にする
  • 家賃を会社口座から家主へ直接支払う
  • 役員が賃料相当額以上を会社に支払う

役員個人名義のまま会社が家賃を払っても、住宅手当とみなされ、全額が給与課税の対象になります。既存の個人契約は法人名義に切り替えるか、最初から法人名義で契約する必要があります。

支払いの流れも重要です。役員がいったん家賃を受け取り、後から会社に渡す形式は認められません。送金元が法人口座でなければ、法人名義で契約していても「役員個人の住宅」と判断されるリスクがあります。

さらに、役員本人から賃料相当額以上を毎月受け取る必要があります。徴収額が賃料相当額を下回ると、差額が役員への現物給与とみなされ、課税対象になります。

役員社宅を導入する4つのステップ

Step1:賃料相当額の計算

固定資産評価証明書を取得し、固定資産税課税標準額を確認します。そのうえで、住宅区分(小規模・通常・豪華)を判定し、月額の自己負担額を計算します。計算書類は税務調査の根拠資料になるため、必ず保管しておきましょう。

Step2:物件の法人名義での契約

既存の個人契約がある場合は、大家さんに名義変更を申し入れます。手数料が発生することもあるため、事前に確認しておくと安心です。新規で物件を探す場合は、最初から法人名義で進めます。

Step3:役員報酬の調整

役員報酬の変更は、事業年度が始まってから3か月以内に行うのが原則です。期限を過ぎると変更分が経費として認められず、節税効果が出ません。「今期からやろう」と思っていたのに期限を過ぎていた、という状況を避けるためにも、年度初めに動き始めることが重要です。

Step4:書類の整備

役員報酬変更の議事録・固定資産税課税明細書・家賃振込明細書・社宅管理規程の4点をそろえておくと、税務調査が入った際に根拠を明確に示せます。

計算のミスや書類の不備は、導入後に発覚すると修正が難しくなります。役員社宅は、導入前に税理士と一緒に設計しておくことをおすすめします。

【注意】やりがちな3つのミスと、税務調査で指摘されないための条件

ノートに「POINT」と書かれ、1から3までの番号が並んだ、要点やステップを整理するイメージ

役員社宅は、正しく運用すれば合法的な節税策です。一方で、要件を満たしていないと税務調査で否認され、追徴課税が発生します。会社と役員の両方に影響するため、最初の設計が欠かせません。

ミス1:個人名義契約のまま会社が家賃を払っている

法人名義への変更を先送りしたまま会社払いを続けると、住宅手当と同じ扱いになり、全額が役員への給与として課税されます

形式面で見るべきなのは、「法人名義の賃貸借契約書があるか」「家賃の送金元が法人口座か」の2点です。この2つがそろっていれば、名義と支払い経路に関するリスクはかなり抑えられます。

ミス2:「だいたい家賃の15%くらいでいいか」と感覚で決めている

自己負担額は「家賃の何%」ではなく、固定資産税課税標準額という別の数字から計算します。感覚で決めた金額が正式な計算式と合っていないと、その差額は「役員への特別ボーナス」とみなされます。会社の経費として認められないだけでなく、税金の計算漏れとして追加指摘を受けるリスクもあります。

固定資産評価証明書を取得し、国税庁が定めた正式な計算式で算定しておきましょう。課税標準額は3年ごとに見直されるため、導入後も定期的な再計算が必要です。

ミス3:根拠書類が整備されていない

正しく計算していても、それを証明できる書類がなければ、税務調査では認められません。計算自体は合っていたのに、書類が残っていないという理由で否認されることもあります。

税務調査では、正しいかどうかに加えて、証明できるかどうかが問われます。課税明細書・役員報酬変更の議事録・社宅管理規程・振込明細をあらかじめそろえておけば、調査が入っても根拠を示せます。

コンサルタントに相談すると、「節税できる」という情報は得られるかもしれません。ただ、税務調査が入った際に一緒に対応できるのは税理士です。書類整備・計算の正確さ・調査対応まで見てもらえる税理士と進めることをおすすめします。

まとめ:社宅への切り替えで手取りがいくら増えるか、数字で確かめよう

役員社宅は、今の住宅の契約名義を切り替えるだけで始められる場合がある節税策です。所得税・住民税・社会保険料が同時に下がるため、一人法人や少人数法人では、年間数十万〜百万円単位の効果につながることがあります。

ただし、効果が大きい分、要件を外したときのリスクも小さくありません。押さえるべきポイントは次の通りです。

  • 節税効果は所得税・住民税・社会保険料の「三重構造」
  • 賃料相当額は住宅タイプ(小規模・通常・豪華)で計算方法が変わる
  • 法人名義契約・会社払い・役員の自己負担の「3要件」を満たすことが必須
  • 固定資産税課税標準額をもとに正確に計算し、定期的に見なおすことが必要
  • 書類4点(課税明細書・議事録・管理規程・振込明細)が税務調査の根拠になる

「自社の場合は年間いくら変わるのか」「今期の役員報酬変更に間に合うのか」は、家賃・役員報酬・物件条件を入れて計算しなければ判断できません。

役員報酬の変更には「事業年度開始から3か月以内」という期限があります。まだ動けていない場合は、早めに確認しておきましょう。

イデア総研税理士法人では、賃料相当額の試算、書類整備、役員報酬変更のタイミングまで税理士がまとめて確認します。「うちの場合、年間いくら変わるか確認したい」という段階のご相談にも対応しています。

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