投稿日:2026.06.25 最終更新日:2026.06.25
インボイス3割特例はいつから?2027年開始・届出不要で使える仕組みと2026年末の注意点
2026年9月末、「2割特例」が終了します。インボイス登録以降、消費税の負担を下げてきた激変緩和措置も、いよいよ最終局面。
代わりに2027〜2028年分から使えるのが「3割特例」です。インボイス登録済みの個人事業主向けに設けられた2年間の経過措置で、確定申告書への付記だけで適用。届出は不要です。
ただ、「届出不要だから、もう対応は完了」と安心してしまうのは早いかもしれません。業種によっては3割特例より簡易課税制度を選んだほうが税額を抑えられるケースがあり、その場合は別途、届出が必要になります。簡易課税を選ぶ場合の期限は2026年12月31日(年末)。
期限ギリギリになって慌てないために、制度のスケジュールや業種別の判断基準、2026年中にやることを、順番に確認していきましょう。
この記事でわかること
- 3割特例の適用期間(2027〜2028年)と対象者
- 2割→3割で税額はいくら増えるか(売上規模別)
- 業種別に3割特例と簡易課税のどちらが有利か
- 3割特例に事前届出は不要(申告書への付記のみ)
- 簡易課税を選ぶ場合の届出期限(2026年12月31日)
南 彰悟
1986年3月6日生まれ。大分県出身。早稲田大学を卒業後、25歳で公認会計士試験に合格。大手監査法人に8年程勤める。2020年税理士登録。イデア総研税理士法人の副代表として活動する。
3割特例は令和9年(2027年)から:2割特例終了〜令和11年の移行スケジュール

「2割特例が令和8年9月末で終わると聞いたけれど、いつまで使えるのか」。まずここを整理しましょう。
個人事業主の場合、1月から12月が消費税の計算期間(課税期間)になります。2割特例の対象は「令和8年9月30日の属する課税期間まで」とされており、個人事業主の場合は令和8年分(2026年)が丸ごと含まれます。
そのため、2割特例を使える最後の確定申告が、令和8年分(2027年2〜3月)になります。
令和9年分(2027年)からは、新たに3割特例が個人事業主向けに2年間設けられます。
3割特例も経過措置のひとつで、令和11年分(2029年)以降は本則課税か簡易課税のいずれかに移ります。2割特例と3割特例の違いと、切り替えのタイミングを表にまとめました。
制度の基本比較
| 制度 | 適用期間 | 対象 | 納税額の計算 |
|---|---|---|---|
| 2割特例 | 令和5年10月〜令和8年分(個人は令和8年分まで) | 個人・法人(一定要件) | 売上税額×20% |
| 3割特例 | 令和9年分(2027)・令和10年分(2028)の2年間 | 個人事業主のみ | 売上税額×30% |
| 本則課税 or 簡易課税 | 令和11年分(2029)以降 | 個人・法人 | 実額控除 or みなし仕入率 |
※「売上税額」とは、売上に含まれる消費税の合計のことです。たとえば税込み110万円の売上があれば、売上税額は10万円になります。
インボイス経過措置の全体スケジュール
| 期間 | 個人事業主の制度 | 備考 |
|---|---|---|
| 令和5年10月〜令和8年9月末含む課税期間 | 2割特例(売上税額×20%) | 法人も対象 |
| 令和8年分(2026年)← 現在ここ | 2割特例(最終年) | 個人の最後の2割特例申告 |
| 令和9年分(2027)・令和10年分(2028) | 3割特例(売上税額×30%) | 個人のみ。届出不要 |
| 令和11年分(2029)以降 | 本則課税 or 簡易課税 | 3割特例終了・経過措置なし |
そもそも:3割特例を使えるのは誰?3条件を満たす個人事業主のみ
使える条件3つ:インボイス登録・個人事業主・前々年売上1,000万円以下
3割特例を使えるのは、次の3つの条件をすべて満たす方です。
- インボイス発行事業者として登録済み
- 個人事業主(法人は一切不可)
- 基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下
法人は一切使えないという点は、意外と見落とされがちです。個人で事業を続けている方が対象であり、法人成りしている場合は令和9年以降、本則課税か簡易課税を選ぶことになります。
③の「前々年の課税売上高1,000万円以下」は、どの年の売上を見るのかで迷いやすい条件です。
- 令和9年分(2027年)に3割特例を使う場合 → 前々年は令和7年(2025年)1〜12月の売上で判断
- 令和10年分(2028年)に3割特例を使う場合 → 前々年は令和8年(2026年)1〜12月の売上で判断
つまり、2025年・2026年の売上がそれぞれ1,000万円以下であれば、2年間を通じて3割特例を使える可能性があります。
売上1,000万円以下の個人事業主であれば条件を満たしやすい一方、複数事業を兼業している場合など、売上の集計方法で判断が分かれることもあります。
年の途中で登録を取り消すと、その時点で3割特例の適用資格を失います。取消を検討している場合は、先に税理士へ相談することをおすすめします。
手続きは確定申告書への付記のみ!届出は一切不要
3割特例に事前の届出は一切必要ありません。確定申告書の所定欄に「特例の適用を受ける旨」を記載するだけで適用されます。
簡易課税とは、ここが大きく違います。簡易課税は「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出する必要がありますが、3割特例は、その手間が一切かかりません。
ただし、あとから簡易課税に切り替えたい場合は、いつ切り替えるかによって届出の期限が変わります。
【切り替え時期別の届出期限】
- 令和9年分(2027年)から最初から簡易課税を使いたい場合:令和8年12月31日までに届出書を提出
- 令和9年分で3割特例→令和10年分から簡易課税に変更したい場合:令和11年3月31日(令和10年分の申告期限)までに届出書を提出
対象になることがわかったとして、気になるのは「実際いくら変わるか」ですよね。差額を見ていきましょう。
3割特例を選ぶと課税売上500万円で年5万円の増税になる

2割特例から3割特例への移行で、消費税の納税額は「1割分」変わります。
「1割分」と聞いてもイメージしにくいので、売上規模別に計算してみます。
2割→3割の差額:売上規模別の比較
3割特例は「売上に含まれる消費税(売上税額)の30%を納める」制度です。
課税売上500万円(税抜)の場合で計算してみます。
- 売上税額 = 500万円 × 10% = 50万円
- 2割特例の納税額:50万円 × 20% = 10万円
- 3割特例の納税額:50万円 × 30% = 15万円
- 差額:+5万円
自分の売上に近い行で確認してみてください。
| 課税売上(税抜) | 売上税額(10%) | 2割特例 納税額 | 3割特例 納税額 | 差額 |
|---|---|---|---|---|
| 200万円 | 20万円 | 4万円 | 6万円 | +2万円 |
| 500万円 | 50万円 | 10万円 | 15万円 | +5万円 |
| 800万円 | 80万円 | 16万円 | 24万円 | +8万円 |
| 1,000万円 | 100万円 | 20万円 | 30万円 | +10万円 |
3割特例の計算は業種に関わらず「売上税額×30%」の一律です。売上が大きい人ほど、差額も広がります。ただ、この数字だけで「3割特例は損だ」と判断するのは少し早いかもしれません。
業種で変わる:3割特例と簡易課税、どちらの税額が少なくなるか

「2割→3割で税額が上がるんだから、みんな損をする」と思う方もいるかもしれません。ただ、業種によっては3割特例を使った方が、簡易課税より税額が少なくなります。
特に、フリーランスのデザイナー・ライター・エンジニア、税理士・会計士などの士業の方で第5種に当たる場合は、3割特例の方が税額が少なくなることが多いです。「税額が上がる」という話に引っ張られて簡易課税に切り替えると、かえって損をすることになってしまいます。
業種別みなし仕入率と税額の比較表
簡易課税制度では、業種ごとに「売上のうち何%を経費とみなすか」という割合(みなし仕入率)が税法で決まっています。下の表で自分の業種が第何種に当たるかを確認してください。右端の「3割特例との比較」欄が、そのまま判断の目安になります。
| 事業区分 | みなし仕入率 | 職種の具体例 | 3割特例との比較 |
|---|---|---|---|
| 第1種(卸売業) | 90% | 問屋・商社 | 簡易課税の税額が少ない |
| 第2種(小売業・農林水産業の飲食料品) | 80% | 小売店・スーパー・ネットショップ・農家(飲食料品) | 簡易課税の税額が少ない |
| 第3種(製造業・建設業・農林水産業) | 70% | 職人・工務店・農家(飲食料品以外) | ほぼ同等 |
| 第4種(飲食業など) | 60% | 飲食店・カフェ・加工賃業 | 3割特例の税額が少ない |
| 第5種(サービス業・金融・保険・運輸) | 50% | フリーランサー・士業・コンサル・美容師・医師 | 3割特例の税額が少ない |
| 第6種(不動産業) | 40% | 大家・不動産仲介 | 3割特例の税額が少ない |
例えば、フリーランスのWebデザイナーで税抜売上700万円の場合です。まず売上税額は、700万円 × 消費税10% = 70万円になります(※10%は標準税率。8%の売上が多い業種は、売上税額自体がこれより少なくなります)。
この70万円をもとに、簡易課税と3割特例の納税額を比べると次のとおりです。
- 簡易課税(第5種・みなし仕入率50%):70万円 × (1-50%) = 35万円
- 3割特例:70万円 × 30% = 21万円
この場合、3割特例の方が年間14万円も少なくなります。「税額が上がる」という情報だけを見てあわてて簡易課税の届出を出してしまうと、毎年14万円ほど余分に納めることになってしまいます。
ただし、一点注意が必要です。「サービス業」でも、飲食店業(店内飲食)は第4種(60%)、それ以外のサービスは第5種(50%)と区分が異なります。表はあくまで目安であり、自分の業種区分に迷う場合や複数の事業を兼業している場合は、次のステップで判断してください。
どちらを選ぶかは3ステップで判断できる
ステップ1:上の表で自分の業種(第何種)を確認する
右端の「3割特例との比較」欄を見れば、どちらが有利かがわかります。複数の事業を兼業している場合は、一方の売上が全体の75%以上を占めていればその業種で一本化できます。それ以下の場合は業種が混在するため、個別の判断が必要です。
ステップ2:簡易課税が有利なら届出、3割特例が有利なら何もしない
第1種(卸売業)・第2種(小売業)に該当する方は、簡易課税の方が税額が少なくなります。2026年12月31日までに届出書を提出してください。
第4〜6種(飲食・サービス・不動産)・フリーランス・士業の方は、3割特例のまま届出は不要です。この場合、2026年中にやることはありません。
ステップ3:外注費・材料費が多い場合は本則課税も視野に入れる
ステップ1・2で判断がついた方は、手続きは不要です。ただし、外注スタッフを多く使う、撮影機材・材料費が大きいという方は、3割特例でも簡易課税でもなく、本則課税(実際の仕入にかかった消費税をそのまま引く方式)が一番有利になることがあります。この場合は実際の帳簿データをもとに試算が必要です。
3割特例でよく出る2つの疑問に答える
3割特例と簡易課税は年単位で切り替えができる(年途中の変更は不可)
年の途中での変更はできませんが、年単位であれば切り替えられます。「令和9年分は3割特例で様子を見て、令和10年分から簡易課税に変える」という選択ができます。
ただし、簡易課税を一度選択すると原則2年間は変更できません。「とりあえず今年だけ」という感覚で選べる制度ではないため、切り替えのタイミングは慎重に。
2029年以降は本則課税か簡易課税の2択になる
3割特例は令和10年分(2028年)で終了します。令和11年分(2029年)以降は本則課税か簡易課税の二択です。令和11年分から簡易課税を使いたい場合は、通常なら令和10年12月31日(2028年末)までに届出が必要です。
令和10年分で3割特例を使っていた場合は、円滑移行措置として令和12年4月1日(令和11年分の申告期限)までに届出すれば、令和11年分から簡易課税を適用できます。2029年以降をどうするかは、業種・費用構造・今後の売上見込み次第で変わります。余裕のあるうちに専門家へ相談しておくと安心です。
簡易課税を選ぶなら届出は2026年12月31日まで!今年中にやること
2026年中に押さえておきたいのは、次の4点です。
今年中の確認チェックリスト
- 業種別比較表で、自分が第何種に当たるかを照らし合わせる
- 3割特例と簡易課税のどちらが有利かを判断する
- 簡易課税を選ぶ場合は2026年12月31日(年末)までに届出書を提出する
- 業種区分や選択に迷う場合は早めに税理士に相談する
判断に迷う場合や本則課税との比較が必要な方は、専門家に相談するのが確実です。
まとめ:3割特例か簡易課税か、2026年内に確認しておきたいこと
3割特例は、令和9年・10年分の2年間、個人事業主に限り届出不要で使える経過措置です。業種によって納税額が変わるため、年内に一度、自分の業種区分を照らし合わせておくことをおすすめします。
この記事のポイント
- 3割特例は2027〜2028年・個人事業主限定・届出不要
- みなし仕入率70%超(第1〜2種)は簡易課税の方が税額は少ない
- 簡易課税を2027年分から使いたい場合は2026年12月31日が期限
- 簡易課税を一度選ぶと2年間は変更できない
押さえておきたい日付は、3つだけです。
- 2026年12月31日:2027年分から簡易課税を選ぶ場合の届出期限
- 2027〜2028年:3割特例の適用期間
- 2029年以降:本則課税または簡易課税の二択へ(経過措置終了)
業種区分が複数にまたがる場合や、本則課税との比較が必要な場合は、帳簿データがなければ試算できません。「仕入・外注費が多い」「複数の事業を兼業している」という方は、2026年12月31日の届出期限前に確認しておくと安心です。簡易課税を選ぶと原則2年間は変更できないため、届出後に不利だと分かっても、税額の差がそのまま2年分続くことになります。
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