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インボイス3割特例はいつから?2027年開始・届出不要で使える仕組みと2026年末の注意点

インボイス3割特例はいつから?2027年開始・届出不要で使える仕組みと2026年末の注意点 | その他

2026年9月末、「2割特例」が終了します。インボイス登録以降、消費税の負担を下げてきた激変緩和措置も、いよいよ最終局面。

代わりに2027〜2028年分から使えるのが「3割特例」です。インボイス登録済みの個人事業主向けに設けられた2年間の経過措置で、確定申告書への付記だけで適用。届出は不要です。

ただ、「届出不要だから、もう対応は完了」と安心してしまうのは早いかもしれません。業種によっては3割特例より簡易課税制度を選んだほうが税額を抑えられるケースがあり、その場合は別途、届出が必要になります。簡易課税を選ぶ場合の期限は2026年12月31日(年末)。

期限ギリギリになって慌てないために、制度のスケジュールや業種別の判断基準、2026年中にやることを、順番に確認していきましょう。

この記事でわかること

  • 3割特例の適用期間(2027〜2028年)と対象者
  • 2割→3割で税額はいくら増えるか(売上規模別)
  • 業種別に3割特例と簡易課税のどちらが有利か
  • 3割特例に事前届出は不要(申告書への付記のみ)
  • 簡易課税を選ぶ場合の届出期限(2026年12月31日)
この記事を書いた人
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南 彰悟

1986年3月6日生まれ。大分県出身。早稲田大学を卒業後、25歳で公認会計士試験に合格。大手監査法人に8年程勤める。2020年税理士登録。イデア総研税理士法人の副代表として活動する。

3割特例は令和9年(2027年)から:2割特例終了〜令和11年の移行スケジュール

「2割特例が令和8年9月末で終わると聞いたけれど、いつまで使えるのか」。まずここを整理しましょう。

個人事業主の場合、1月から12月が消費税の計算期間(課税期間)になります。2割特例の対象は「令和8年9月30日の属する課税期間まで」とされており、個人事業主の場合は令和8年分(2026年)が丸ごと含まれます。

そのため、2割特例を使える最後の確定申告が、令和8年分(2027年2〜3月)になります。

令和9年分(2027年)からは、新たに3割特例が個人事業主向けに2年間設けられます。

3割特例も経過措置のひとつで、令和11年分(2029年)以降は本則課税か簡易課税のいずれかに移ります。2割特例と3割特例の違いと、切り替えのタイミングを表にまとめました。

制度の基本比較

制度 適用期間 対象 納税額の計算
2割特例 令和5年10月〜令和8年分(個人は令和8年分まで) 個人・法人(一定要件) 売上税額×20%
3割特例 令和9年分(2027)・令和10年分(2028)の2年間 個人事業主のみ 売上税額×30%
本則課税 or 簡易課税 令和11年分(2029)以降 個人・法人 実額控除 or みなし仕入率

※「売上税額」とは、売上に含まれる消費税の合計のことです。たとえば税込み110万円の売上があれば、売上税額は10万円になります。

インボイス経過措置の全体スケジュール

期間 個人事業主の制度 備考
令和5年10月〜令和8年9月末含む課税期間 2割特例(売上税額×20%) 法人も対象
令和8年分(2026年)← 現在ここ 2割特例(最終年) 個人の最後の2割特例申告
令和9年分(2027)・令和10年分(2028) 3割特例(売上税額×30%) 個人のみ。届出不要
令和11年分(2029)以降 本則課税 or 簡易課税 3割特例終了・経過措置なし

そもそも:3割特例を使えるのは誰?3条件を満たす個人事業主のみ

使える条件3つ:インボイス登録・個人事業主・前々年売上1,000万円以下

3割特例を使えるのは、次の3つの条件をすべて満たす方です。

  1. インボイス発行事業者として登録済み
  2. 個人事業主(法人は一切不可)
  3. 基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下

法人は一切使えないという点は、意外と見落とされがちです。個人で事業を続けている方が対象であり、法人成りしている場合は令和9年以降、本則課税か簡易課税を選ぶことになります。

③の「前々年の課税売上高1,000万円以下」は、どの年の売上を見るのかで迷いやすい条件です。

  • 令和9年分(2027年)に3割特例を使う場合 → 前々年は令和7年(2025年)1〜12月の売上で判断
  • 令和10年分(2028年)に3割特例を使う場合 → 前々年は令和8年(2026年)1〜12月の売上で判断

つまり、2025年・2026年の売上がそれぞれ1,000万円以下であれば、2年間を通じて3割特例を使える可能性があります。

売上1,000万円以下の個人事業主であれば条件を満たしやすい一方、複数事業を兼業している場合など、売上の集計方法で判断が分かれることもあります。

【補足】インボイス登録を取り消した場合

年の途中で登録を取り消すと、その時点で3割特例の適用資格を失います。取消を検討している場合は、先に税理士へ相談することをおすすめします。

手続きは確定申告書への付記のみ!届出は一切不要

3割特例に事前の届出は一切必要ありません。確定申告書の所定欄に「特例の適用を受ける旨」を記載するだけで適用されます。

簡易課税とは、ここが大きく違います。簡易課税は「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出する必要がありますが、3割特例は、その手間が一切かかりません。

ただし、あとから簡易課税に切り替えたい場合は、いつ切り替えるかによって届出の期限が変わります。

【切り替え時期別の届出期限】

  • 令和9年分(2027年)から最初から簡易課税を使いたい場合:令和8年12月31日までに届出書を提出
  • 令和9年分で3割特例→令和10年分から簡易課税に変更したい場合:令和11年3月31日(令和10年分の申告期限)までに届出書を提出

対象になることがわかったとして、気になるのは「実際いくら変わるか」ですよね。差額を見ていきましょう。

3割特例を選ぶと課税売上500万円で年5万円の増税になる

2割特例から3割特例への移行で、消費税の納税額は「1割分」変わります。

「1割分」と聞いてもイメージしにくいので、売上規模別に計算してみます。

2割→3割の差額:売上規模別の比較

3割特例は「売上に含まれる消費税(売上税額)の30%を納める」制度です。

課税売上500万円(税抜)の場合で計算してみます。

  • 売上税額 = 500万円 × 10% = 50万円
  • 2割特例の納税額:50万円 × 20% = 10万円
  • 3割特例の納税額:50万円 × 30% = 15万円
  • 差額:+5万円

自分の売上に近い行で確認してみてください。

課税売上(税抜) 売上税額(10%) 2割特例 納税額 3割特例 納税額 差額
200万円 20万円 4万円 6万円 +2万円
500万円 50万円 10万円 15万円 +5万円
800万円 80万円 16万円 24万円 +8万円
1,000万円 100万円 20万円 30万円 +10万円

3割特例の計算は業種に関わらず「売上税額×30%」の一律です。売上が大きい人ほど、差額も広がります。ただ、この数字だけで「3割特例は損だ」と判断するのは少し早いかもしれません。

業種で変わる:3割特例と簡易課税、どちらの税額が少なくなるか

「2割→3割で税額が上がるんだから、みんな損をする」と思う方もいるかもしれません。ただ、業種によっては3割特例を使った方が、簡易課税より税額が少なくなります。

特に、フリーランスのデザイナー・ライター・エンジニア、税理士・会計士などの士業の方で第5種に当たる場合は、3割特例の方が税額が少なくなることが多いです。「税額が上がる」という話に引っ張られて簡易課税に切り替えると、かえって損をすることになってしまいます。

業種別みなし仕入率と税額の比較表

簡易課税制度では、業種ごとに「売上のうち何%を経費とみなすか」という割合(みなし仕入率)が税法で決まっています。下の表で自分の業種が第何種に当たるかを確認してください。右端の「3割特例との比較」欄が、そのまま判断の目安になります。

事業区分 みなし仕入率 職種の具体例 3割特例との比較
第1種(卸売業) 90% 問屋・商社 簡易課税の税額が少ない
第2種(小売業・農林水産業の飲食料品) 80% 小売店・スーパー・ネットショップ・農家(飲食料品) 簡易課税の税額が少ない
第3種(製造業・建設業・農林水産業) 70% 職人・工務店・農家(飲食料品以外) ほぼ同等
第4種(飲食業など) 60% 飲食店・カフェ・加工賃業 3割特例の税額が少ない
第5種(サービス業・金融・保険・運輸) 50% フリーランサー・士業・コンサル・美容師・医師 3割特例の税額が少ない
第6種(不動産業) 40% 大家・不動産仲介 3割特例の税額が少ない

例えば、フリーランスのWebデザイナーで税抜売上700万円の場合です。まず売上税額は、700万円 × 消費税10% = 70万円になります(※10%は標準税率。8%の売上が多い業種は、売上税額自体がこれより少なくなります)。

この70万円をもとに、簡易課税と3割特例の納税額を比べると次のとおりです。

  • 簡易課税(第5種・みなし仕入率50%):70万円 × (1-50%) = 35万円
  • 3割特例:70万円 × 30% = 21万円

この場合、3割特例の方が年間14万円も少なくなります。「税額が上がる」という情報だけを見てあわてて簡易課税の届出を出してしまうと、毎年14万円ほど余分に納めることになってしまいます。

ただし、一点注意が必要です。「サービス業」でも、飲食店業(店内飲食)は第4種(60%)、それ以外のサービスは第5種(50%)と区分が異なります。表はあくまで目安であり、自分の業種区分に迷う場合や複数の事業を兼業している場合は、次のステップで判断してください。

どちらを選ぶかは3ステップで判断できる

ステップ1:上の表で自分の業種(第何種)を確認する

右端の「3割特例との比較」欄を見れば、どちらが有利かがわかります。複数の事業を兼業している場合は、一方の売上が全体の75%以上を占めていればその業種で一本化できます。それ以下の場合は業種が混在するため、個別の判断が必要です。

ステップ2:簡易課税が有利なら届出、3割特例が有利なら何もしない

第1種(卸売業)・第2種(小売業)に該当する方は、簡易課税の方が税額が少なくなります。2026年12月31日までに届出書を提出してください。

第4〜6種(飲食・サービス・不動産)・フリーランス・士業の方は、3割特例のまま届出は不要です。この場合、2026年中にやることはありません。

ステップ3:外注費・材料費が多い場合は本則課税も視野に入れる

ステップ1・2で判断がついた方は、手続きは不要です。ただし、外注スタッフを多く使う、撮影機材・材料費が大きいという方は、3割特例でも簡易課税でもなく、本則課税(実際の仕入にかかった消費税をそのまま引く方式)が一番有利になることがあります。この場合は実際の帳簿データをもとに試算が必要です。

3割特例でよく出る2つの疑問に答える

3割特例と簡易課税は年単位で切り替えができる(年途中の変更は不可)

年の途中での変更はできませんが、年単位であれば切り替えられます。「令和9年分は3割特例で様子を見て、令和10年分から簡易課税に変える」という選択ができます。

ただし、簡易課税を一度選択すると原則2年間は変更できません。「とりあえず今年だけ」という感覚で選べる制度ではないため、切り替えのタイミングは慎重に。

2029年以降は本則課税か簡易課税の2択になる

3割特例は令和10年分(2028年)で終了します。令和11年分(2029年)以降は本則課税か簡易課税の二択です。令和11年分から簡易課税を使いたい場合は、通常なら令和10年12月31日(2028年末)までに届出が必要です。

令和10年分で3割特例を使っていた場合は、円滑移行措置として令和12年4月1日(令和11年分の申告期限)までに届出すれば、令和11年分から簡易課税を適用できます。2029年以降をどうするかは、業種・費用構造・今後の売上見込み次第で変わります。余裕のあるうちに専門家へ相談しておくと安心です。

簡易課税を選ぶなら届出は2026年12月31日まで!今年中にやること

2026年中に押さえておきたいのは、次の4点です。

今年中の確認チェックリスト

  • 業種別比較表で、自分が第何種に当たるかを照らし合わせる
  • 3割特例と簡易課税のどちらが有利かを判断する
  • 簡易課税を選ぶ場合は2026年12月31日(年末)までに届出書を提出する
  • 業種区分や選択に迷う場合は早めに税理士に相談する

判断に迷う場合や本則課税との比較が必要な方は、専門家に相談するのが確実です。

まとめ:3割特例か簡易課税か、2026年内に確認しておきたいこと

3割特例は、令和9年・10年分の2年間、個人事業主に限り届出不要で使える経過措置です。業種によって納税額が変わるため、年内に一度、自分の業種区分を照らし合わせておくことをおすすめします。

この記事のポイント

  • 3割特例は2027〜2028年・個人事業主限定・届出不要
  • みなし仕入率70%超(第1〜2種)は簡易課税の方が税額は少ない
  • 簡易課税を2027年分から使いたい場合は2026年12月31日が期限
  • 簡易課税を一度選ぶと2年間は変更できない

押さえておきたい日付は、3つだけです。

  • 2026年12月31日:2027年分から簡易課税を選ぶ場合の届出期限
  • 2027〜2028年:3割特例の適用期間
  • 2029年以降:本則課税または簡易課税の二択へ(経過措置終了)

業種区分が複数にまたがる場合や、本則課税との比較が必要な場合は、帳簿データがなければ試算できません。「仕入・外注費が多い」「複数の事業を兼業している」という方は、2026年12月31日の届出期限前に確認しておくと安心です。簡易課税を選ぶと原則2年間は変更できないため、届出後に不利だと分かっても、税額の差がそのまま2年分続くことになります。

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