投稿日:2026.06.30 最終更新日:2026.06.30
出張旅費規程とは?節税メリット・作り方・日当金額の決め方を税理士が解説
「節税になると聞いたから旅費規程を導入したい。でも、うちのような小さな会社でも使える?それに日当はいくらにすればいいんだろう?」
旅費規程の日当は、高く設定しすぎると税務調査で否認され、せっかくの節税どころか追徴課税になるリスクがあります。しかも、税務調査でチェックされるのは金額だけではありません。
精算書の保管や全員への適用といった「正しい運用」ができているかもセットで見られます。
とはいえ、旅費規程は一人法人を含め、どんな規模の会社でも導入ができます。大切なのは、金額の根拠と運用ルールを最初からセットで押さえておくこと。
本記事では、税務調査で否認されない日当の決め方から実際の運用まで、イデア総研税理士法人が条文サンプルも交えて解説します。
この記事でわかること
- 旅費規程がない状態で日当を払うと「給与扱い」になる理由
- 日当・宿泊費の役職別相場と税務上の金額設定の判断軸
- 役員だけに高い日当を設定してよいか(適用範囲との違い)
- 旅費規程の作り方4ステップと税務調査で問われる運用3要件
- 今すぐコピーして使える旅費規程の条文サンプル(第1〜6条)
南 彰悟
1986年3月6日生まれ。大分県出身。早稲田大学を卒業後、25歳で公認会計士試験に合格。大手監査法人に8年程勤める。2020年税理士登録。イデア総研税理士法人の副代表として活動する。
そもそも:旅費規程がないと、日当を払っても「給与扱い」になる

旅費規程(旅費規定とも表記されます)とは、社員が出張する際の交通費・宿泊費・日当の支払いルールを定めた社内規程のことです。
交通費と宿泊費は、旅費規程がなくても領収書ベースで経費にできます。でも定額の日当だけは違います。旅費規程がないまま日当を払うと、非課税の日当としては認められにくくなります。
それだけでなく、旅費規程なしに日当を払ってしまうと、税務上は「給与」として扱われ、従業員の所得税・住民税の課税対象になります。
「出張に行ってもらうための費用を渡しただけなのに、なぜ給与扱いになるの?」と思われるかもしれませんが、ルール(旅費規程)がない状態では税務署もそう判断せざるを得ないのです。
「では、自分の会社でも作れるのか?」と気になるところですが、一人社長・一人法人を含め、どんな会社でも作れます。手続きも複雑ではありません。
まずは、旅費規程を導入すると実際に何が変わるのかを見ていきましょう。
旅費規程を導入するとどうなる?従業員と会社のWin-Win効果を解説!

旅費規程が多くの会社で使われているのは、従業員にも会社にも同時にメリットがあるからです。
従業員のメリット:日当が非課税になり手取りが増える
旅費規程を使うと、給与を増やさなくても社員の手取りを増やせます。
日当は、所得税・住民税がかからないだけでなく、社会保険料(健康保険・厚生年金)の計算対象にもなりません。
給与を上げると社会保険料も自動的に増えますが、日当には関係ありません。
実際に数字で確認してみましょう。
- 月5回の出張 × 日当10,000円 = 月5万円が非課税
- 年間では60万円が非課税で受け取れる
- 仮に所得税率20%の方であれば、年間約12万円の手取り増加効果
例えば「給与を月5万円増やしたい」という場合、所得税・住民税・社会保険料が差し引かれるため、実際に手元に残るのは5万円より少なくなります。
同じ5万円を出張5回分の日当として受け取ると、全額がそのまま手元に残ります。
会社のメリット:経費が増え、税金・社会保険料の負担が3つの面で抑えられる!
会社側で特に大きいのは、次の3つです。
日当・宿泊費・交通費は「旅費交通費」として全額経費にできます。
特に日当は、旅費規程がなければそもそも経費にできません。規程を作ることで初めて使える節税効果です。
国内出張の日当・宿泊費は、支払った消費税の一部を取り戻せる対象になります。しかも出張の領収書がなくても適用できます。
日当10,000円なら、税込金額に含まれる消費税10%分(10,000円×10÷110=約909円)が戻ってきます。
出張が多い会社ほど積み重なります(海外出張は対象外)。
給与を上げると、会社も社会保険料(会社負担分)を余分に払わなければなりません。
給与を1万円上げると、会社・個人合わせて社会保険料も数千円増えます(料率は都道府県によって異なります)。
日当は給与とは別枠の支給なので、会社負担の社会保険料は増えません。
出張が多い業種(営業職・建設業・医療系など)では、これら3つの効果が積み重なり、特に大きな差になります。
旅費規程に記載すべき6つの項目は?

旅費規程に必ず入れておきたい項目は以下の6つです。
中でも「適用範囲」は税務上の落とし穴になりやすいので、ひとつずつ確認しながら読んでみてください。
- 出張の定義:国内出張・日帰り出張の基準。一般的には「片道100km以上の移動を出張とする」と定義するケースが多いです。
- 交通費:実費支給か定額かの区分。新幹線のグレード基準(普通車指定席か自由席か等)を明記します。
- 宿泊費:役職別の上限額(例:役員20,000円、従業員12,000円)または実費精算(領収書提出を条件に実際の費用を支給)
- 日当:役職別の定額(例:役員10,000円、従業員6,000円)
- 精算ルール:申請期限(出張後5営業日以内など)・領収書の要否・書式
- 適用範囲:全役員・全従業員への適用を明記(「役員のみ」は要注意)
この6つの中で税務上特に重要なのが「適用範囲」です。「役員のみ」への適用は否認リスクになります。なぜそうなるかは、次のセクションで詳しく説明します。
また、「施行日」(いつからこの規程が有効か)もあわせて記載しておきましょう。
宿泊費と日当の項目に金額を記載したら、なぜその金額にしたかのメモも一緒に残しておくと安心です。後から「なぜこの金額にしたのか?」と問われたとき、このメモが役立ちます。
日当・宿泊費はいくらに設定すればいい?税理士目線の判断軸

「いくらにすればいいか」は、多くの方が迷うポイントです。
相場の目安と、役員の扱いで混同しやすい点、そして「いくらまでOKか」の判断軸を順番に確認していきます。
役職別の日当・宿泊費の相場:一般従業員2,000〜5,000円、役員5,000〜15,000円
財務省が2023年に上場企業551社を対象に行ったアンケートによると、国内出張の日当の平均は1日あたり2,621円、宿泊費の平均は1泊10,672円でした。
ただし、これは上場企業のデータです。中小企業が金額を決める際は、以下の表を参考にしながら、自社の規模や出張の実態に合った金額を考えてください。
出典:財務省|「民間企業における出張旅費規程等に関するアンケート報告書」令和5年8月
| 役職 | 日当(国内・1日) | 宿泊費(国内・1泊) |
|---|---|---|
| 一般従業員 | 2,000〜5,000円 | 8,000〜12,000円 |
| 管理職 | 3,000〜8,000円 | 10,000〜15,000円 |
| 役員(社長含む) | 5,000〜15,000円 | 12,000〜20,000円 |
海外出張がある場合は、国内出張とは別に基準を設ける必要があります。
渡航先や滞在日数によって必要な費用が大きく変わるため、国内出張の金額をそのまま流用しないようにしましょう。
なお、近年はホテル宿泊費の相場が上昇しており、地方都市(福岡など)でも平日に15,000円を超えるケースが増えています。こうした状況を踏まえ、宿泊費については上限額を設けず、領収書の提出を条件に実費精算とする会社も増えています。
宿泊費を上限額方式で設定している場合、ホテル代が値上がりして実際の費用が上限を超えても、規程通りの上限額しか支給できません。「実費が高かったから」と会社が上限を超えて支給してしまうと、規程の上限を超えた支給分が「給与」として課税されるリスクがあります。実費精算であれば、実際にかかった費用をそのまま支給できるため、このリスクを避けられます。どちらの方式にするかは、自社の出張実態に合わせて検討しましょう。
役員だけ日当を高くするのはOK?「金額差」と「適用範囲の限定」は別問題
「役員だけ日当を高くするのはNG」と思っている方もいますが、これは誤解です。
役職によって金額に差をつけること自体は、問題ありません。 役員は責任の重さも移動のグレードも一般社員とは違います。
相場の範囲内で、規程に明記されていれば認められます。
ただし、一般従業員が3,000円なのに役員だけ50,000円のような極端な差は指摘を受ける可能性があります。
混同しやすいのが「金額差」と「適用範囲の限定」です。
- 「役員の日当を高くする」は問題なし。
- 「役員だけに旅費規程を適用する」は否認リスクあり。 従業員を外して役員だけに日当を払うと、「給与を形だけ旅費に見せかけている」と判断される可能性があります。
一人社長の場合は「役員のみ=全員」という状態ですが、将来従業員が入社しても同じルールを適用できる形で規程を書いておきましょう。
いくらまで設定できる?税理士が示す判断の軸
国税庁は具体的な上限金額を定めていません。税務上問われるのは「その出張で、普通にかかる費用の範囲内かどうか」です。
日当は食事代などの実費を一括で渡す定額給付なので、「実際の出張で使いそうな金額かどうか」が判断の基準になります。
まずは上の相場表(役員なら5,000〜15,000円)の範囲を目安にし、なぜその金額にしたかをメモに残しておきましょう。
2万〜3万円を超えてくると「出張でそんなに使うのか?」と疑われやすくなり、税務調査で指摘されるリスクが高まります。
最終的な金額は、自社の出張実態を踏まえて税理士と確認するのが確実です。
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旅費規程の作り方:4ステップ+税務調査で指摘されないための運用3要件

作成は4ステップで完結します。ただ、作ることよりも「作った後に使い続けること」の方が大切です。
まず作成ステップを確認してから、運用3要件を見ていきましょう。
旅費規程を作る4ステップ!草案から精算書の運用まで
STEP 1:規程の草案を作成する
記載すべき6つの項目と日当・宿泊費の金額を決めます。
このとき、金額の根拠メモを一緒に作成しておくと、後の税務調査対策になります。
施行日(いつから適用するか)も規程に明記しておきましょう。
STEP 2:取締役会や株主総会で承認し、議事録を残す
旅費規程は就業規則とは別書類として作れます。
ただし、役員の日当などを定める場合は、取締役会(取締役会がない会社は株主総会)での決議が法律上必須となります。
決議を行ったら、必ず「旅費規程を制定した旨の議事録」を作成・保管しておきましょう。
これが、税務調査のときに「会社として正式な手続きを経て承認した規程です」という動かぬ証拠になります。
STEP 3:全従業員に周知する
従業員が常時10人以上いる会社は、就業規則の附属規程として労働基準監督署への届出が必要です。
10人未満の会社は届出不要ですが、全従業員への周知は必須です。
STEP 4:出張のたびに旅費精算書を作成・保存する
規程を作るだけでは不十分です。
実際に精算書を作って保存している実績こそが、税務調査対策の核心になります。
出張旅費精算書には出張先・日付・金額・目的を記載し、新幹線チケットやホテル領収書と一緒に保管します。
STEP4まで揃って、初めて旅費規程が「機能している状態」といえます。
作ったあとが本番!税務調査で指摘されないための運用3要件
実は、ここが多くの会社でおろそかになりやすいポイントです。「規程は作った」で安心してしまい、運用が伴っていないケースが少なくありません。
以下の3点を継続して守っていきましょう。
- 全従業員・役員に適用する。 一人社長の場合は「役員(代表取締役)のみ=全員」と規程に書いておけば問題ありません。
- 精算書を毎回作成・保存する。 「規程には1万円と書いているが実際は3万円支給」という規程と実態の乖離も否認の原因になります。また、日当は「出張1回ごとの都度支給」の形式にすることが必要です。月額固定(「毎月○万円の日当」)にすると給与とみなされる可能性があります。
- 書類を最低7年間保存する。法人税法上、書類の保存義務期間は7年です。精算書・領収書・金額の根拠メモをまとめて保管しておきましょう。金額が相場の範囲内でも「なぜその金額にしたか」を問われたときに説明できなければ、否認につながります。
逆にいうと、税務調査で見られやすいのは「規程はあるのに精算書がない」「実際には役員だけに支給している」「なぜその金額にしたか説明できない」というケースです。
規程そのものより、運用の実態を見られると考えておきましょう。
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すぐ使える!旅費規程の条文サンプル(第1〜6条)
会社名・金額欄・施行日を書き換えるだけで使える最小構成のサンプルです。
国内出張のみを対象としています。このままコピーして、自社に合わせて調整してください。
海外出張がある場合は別途条項の追加が必要です。
第1条(目的)
この規程は、株式会社〇〇(以下「会社」)の役員や従業員が、会社の仕事で出張する際の旅費の支給について定めるものです。
第2条(適用範囲)
この規程は、会社のすべての役員と従業員に適用されます。
第3条(出張の定義)
この規程における出張とは、普段の勤務地を起点とし、目的地までの距離が片道100km以上の場所へ移動し、業務を行うことをいいます。
第4条(旅費の種類)
会社が支給する旅費は、交通費、宿泊費、日当とします。
第5条(旅費の支給基準)
旅費の支給基準は、以下の通りとします。
・交通費:最も経済的かつ合理的な経路の実費を全額支給(新幹線は普通車指定席まで)
・宿泊費(1泊あたり上限):代表取締役 18,000円 / 従業員 12,000円
・日当(1日あたり):代表取締役 10,000円 / 従業員 6,000円
※日当は宿泊を伴う場合は出発日から帰宅日まで、日帰りの場合は1日分を支給
第6条(申請と精算)
出張者は、事前に所定の書式で出張申請を行うものとします。
出張終了後、原則として5営業日以内に「出張旅費精算書」に、交通費の領収書またはチケット・宿泊費の領収書・出張報告書を添えて提出し、精算を受けるものとします。
附則
この規程は、20○○年○月1日から有効とします。
第2条に「すべての役員と従業員に適用」と明記している点が、税務調査対策の重要ポイントです。
第5条の金額欄は、記事内の相場表を参考に自社に合った金額を入れてください。
なぜその金額にしたかのメモも、STEP1と同様にあわせて作成しておきましょう。
よくある条文の落とし穴は「適用範囲の記載なし」「精算書提出義務の不明記」「施行日の記載なし」の3点です。
サンプルを使う際は、この3点が入っているかを必ず確認しましょう。
「自分の会社の場合はどうなる?」判断が難しいケースと相談のタイミング

ルールがわかっても、いざ自社に当てはめると「これはうちの場合どうなるの?」と迷う場面が出てきます。
よくある判断に迷う場面を、3つ挙げておきます。
出張が多い業種で「1日15,000円にしたい」という希望がある場合、相場表の範囲内であっても業種や会社規模によって判断が変わります。
一概には言えないので、税理士への確認をおすすめします。
その金額が妥当かは会社ごとに異なります。日当の金額は、最終的に会社の申告内容にも関わる数字です。
高めに設定する前に、自社の出張実態や役員報酬とのバランスを税理士と確認しておきましょう。
会社の規模や出張の頻度が変わっていると、当時は問題なかった金額が今は否認リスクになることがあります。定期的な見直しが有効です。
少しでも「自分の場合はどうなるんだろう」と気になったら、そのタイミングでご相談ください。疑問の段階でも、もちろん大丈夫です。
まとめ:旅費規程は、金額の根拠と運用実績まで揃えて使い始める
旅費規程は、従業員にも会社にもメリットのある節税策です。ただし、規程を作るだけでは不十分です。
この記事のポイント
- 日当は旅費規程があって初めて非課税になり、従業員の手取りが増える
- 会社側は経費が増え、社会保険料の負担も抑えられる(法人税・消費税・社会保険料の3点効果)
- 日当は相場表の範囲内で設定し、根拠メモを残す(2万円超はリスクが高い)
- 精算書・全員への適用範囲・根拠メモが税務調査の核心
ここまで読んでいただければ、「どの金額なら安全か」「役員だけ高くして大丈夫か」「何を書けばいいか」が、自分で判断できるようになっているはずです。
あとは、その判断を自社に当てはめるだけです。業種・出張頻度・役員報酬によって、妥当な金額は会社ごとに変わります。ルールを知っていても、自分の場合への当てはめは一人では難しいものです。
イデア総研税理士法人では、大分・九州を中心に800社以上の顧問実績をもとに、旅費規程の金額設定から運用の確認まで一貫してサポートしています。節税の制度を使えているかどうかの確認も含め、改正があるたびに顧問先へ個別にご案内しています。
「自社の場合はどう対応すればいいか」が気になった方は、まずはお気軽にご相談ください。
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