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役員報酬の変更タイミング|いつ変えると得か・損か、決算月別スケジュールと実務ポイント

役員報酬の変更タイミング|いつ変えると得か・損か、決算月別スケジュールと実務ポイント | 節税について

「役員報酬っていつまでに変えればいい?」「そもそも今の時期でも変えられるの?」

「今期こそ役員報酬を変えよう」と思ったとき、こんな疑問が出てきますよね。

役員報酬は、好きなタイミングで自由に変えられるわけではありません。税法上、変更できる時期は事業年度が始まってから3ヶ月以内と決まっていて、この期間をすぎると変更分の差額がそのまま経費として認められなくなります。

ただ、「3ヶ月以内に変えればいい」という知識だけでは、実はまだ不十分です。3ヶ月の中でいつ変えるかによっても、税務上の有利・不利が変わります。 さらに、社会保険料まで含めると、得するタイミングがもう一度変わることもあります。

本記事では、顧問先800社以上を持つイデア総研税理士法人が、変更のタイミングと手続きのポイントを順番に解説します。

この記事でわかること

  • 役員報酬を変更できる時期と3ヶ月ルールの根拠
  • 自社の決算月別の変更が可能な期間とリミット
  • 変更できる期間の中で「いつ変えると得か・損か」の考え方
  • 社会保険料まで含めたトータルの最適タイミング
  • 3ヶ月を過ぎても変更が認められる3つの例外条件
  • 変更前に確認すべき実務上の5つの誤解
この記事を書いた人
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南 彰悟

1986年3月6日生まれ。大分県出身。早稲田大学を卒業後、25歳で公認会計士試験に合格。大手監査法人に8年程勤める。2020年税理士登録。イデア総研税理士法人の副代表として活動する。

目次

期限を外すと変更分の差額が経費にならない

なぜ役員報酬は好きなタイミングで変えられないのか、まず確認しておきましょう。

役員報酬の金額は、社長が自分の判断で自由に動かせないよう、変更できる時期が法律で決められています。たとえば「今期は利益が出そうだから報酬を増やして税金を減らそう」「税務調査が入りそうだから下げておこう」といった操作を防ぐためです。

経費として認められるには「毎月同額」の支給が条件

中小企業の社長が受け取る役員報酬のほとんどは、「定期同額給与」という形式で支払われています。難しい言葉ですが、要するに「毎月、同じ金額を払い続ける」というシンプルなルールです。

この定期同額給与として経費に認めてもらうには、2つの条件を満たす必要があります。

  • 毎月、同じ金額を支給すること
  • 事業年度が始まってから3ヶ月以内に変更を行うこと

出典:法人税法第34条第1項第1号

出典:法人税法施行令第69条第1項第1号

「毎月同額は守っているから大丈夫」と思っていても、変更する時期の条件を別で満たさないと認められません。この2つはどちらも必要です。

出典:No.5211 役員に対する給与|国税庁 

出典:役員給与に関するQ&A(情報整理)|国税庁

決算月が変われば変更できる期間も変わる

「事業年度開始から3ヶ月以内」というのは、決算月が違えば当てはまる時期が変わります。まず自社の決算月で変更できる期間を確認しておきましょう。

決算月別の変更が可能な期間

決算月 事業年度の始まり 変更できる期間
3月決算 4月〜 4月・5月・6月(6月末まで)
6月決算 7月〜 7月・8月・9月(9月末まで)
9月決算 10月〜 10月・11月・12月(12月末まで)
12月決算 1月〜 1月・2月・3月(3月末まで)

ここで、多くの人が勘違いしやすいポイントがあります。期限の基準は「株主総会を開いた日」ではなく、「新しい報酬を最初に振り込む日」ということです。

たとえば、3月決算の会社が「6月末に株主総会を開いて、7月分から新報酬を適用しよう」と計画したとします。総会自体は期限内(6月末)に終わっていても、最初の振込日が7月になった時点で期限オーバーです。「総会は間に合ったのに……」と感じるかもしれませんが、振り込む日が基準になります。

6月支給分から変えたいなら、5月末までに総会を終え、6月の支給日に新しい金額で振り込む。これが正しいスケジュールです。

減額したのに経費にならないケースもある

増額したまま3ヶ月を過ぎた場合だけでなく、「減額したまま3ヶ月を過ぎた場合」も同じルールが適用されます。

増額した場合の例
  • 月額50万円を期中の10月に70万円へ増額
  • 差額20万円×6ヶ月(10月〜3月)=120万円が経費にならない
減額した場合の例
  • 月額50万円を12月に30万円へ減額
  • 4月から11月の8ヶ月間、20万円多く払っていたとみなされる
  • 差額20万円×8ヶ月=160万円が経費にならない

「会社のために自分の報酬を下げたのに、経費として認めてもらえない」。理不尽に感じるかもしれませんが、これが税法上のルールです。業績が悪化してやむを得ず下げるケースには例外があります。詳しくはこの後で解説します。

変更期間が始まってから動いても間に合わない

めくられて重なり合ったカレンダーのページのクローズアップ。赤や青で印字された日付が、時間の経過、締め切り、スケジュール管理といったコンセプトを表現している。

「4月に事業年度が始まったから、6月末まであるじゃないか」と思うかもしれません。ところが、税理士への相談・株主総会の準備・振込日の逆算まで含めると、実際に使える時間はずっと短くなります。

3月決算の会社:実質のリミットは2月末

スケジュール別の準備期限

何月支給分から変更したいか 総会決議の期限 税理士への相談・検討の期限
4月支給分から 3月末まで 2月中には検討開始
5月支給分から 4月末まで 2〜3月中に方針決定
6月支給分から 5月末まで 3〜4月中に方針決定

たとえ「6月支給分から変更」を狙うとしても、5月末には総会を終えておく必要があります。株主総会の準備、税理士への相談、報酬額の検討まで含めると、2月中に方針を固めておくのが現実的なリミットです。

どの決算月も変更できる期間の前月末がリミット!

主要決算月別の変更が可能な期間と検討の期限

決算月 変更できる期間 実質的な検討の期限
3月 4〜6月 2月末
6月 7〜9月 5月末
9月 10〜12月 8月末
12月 1〜3月 11月末
2月 3〜5月 1月末
5月 6〜8月 4月末

「変更できる期間の始まる月の前月末」を目安にしておくと、余裕を持って動けます。

※上記の「実質的な検討の期限」は実務上の目安です。法律が定めているのは「事業年度開始から3ヶ月以内」という支給日の期限です。

変更月が違うだけで経費になる金額が変わる

ここからが、多くの人が見落としている話です。「3ヶ月以内に変えればOK」は正しいのですが、3ヶ月の中でもいつ変えるかによって経費になる金額が変わります。 同じ「期限内の変更」なのに、得する額が違うのです。

増額するなら「早い月」が税務上有利!

経費として認められる月数が多いほど、節税効果は大きくなります。

たとえば3月決算の会社で、月額50万円を70万円へ増額するケース(差額は20万円)で確認しましょう。

増額を適用する月 経費になる増額分の期間 年間の経費増加額
4月から 4月〜3月(12ヶ月) 240万円
5月から 5月〜3月(11ヶ月) 220万円
6月から 6月〜3月(10ヶ月) 200万円

どちらも「3ヶ月以内の変更」として有効ですが、4月変更と6月変更では年間40万円の経費差が出ます。 法人税率25%なら、税負担で約10万円の違いになります。「変えれば同じ」ではないのです。

減額は下げる目的によって最適なタイミングが変わる

資金繰り改善が目的なら、できるだけ早く報酬を下げるのが基本です。報酬が低いほど会社に資金が残り、早いほどその期間が長くなります。

業績悪化の例外を使う場合は、事情が発生した時点で即報酬を変更するのが原則です。「業績が著しく悪化した」という理由で期中に変更できる例外があります(詳しくは後述)。この場合、「その状況が起きたとき」に変更しないと、後から否認される可能性が高まります。

「節税のために下げたい」は、実は逆効果になる!

意外に思われるかもしれませんが、役員報酬を減額すると会社の利益が増えて法人税が上がります。「節税したいから下げよう」とすると、社長の手取りは減るのに会社が払う税金まで増える、という結果になりかねません。

増額か減額か、目的によって最適な変更月が決まる

目的 最適な変更月 理由
増額(節税) 変更できる期間の最初の月 経費になる月数が最大になる
減額(資金繰り改善) 変更できる期間の最初の月 低い報酬期間が長くなる
減額(業績悪化の例外) 事情が発生した時点で即 書類の整合性が保ちやすい

ただし、これは「税務上」の最適解です。社会保険料まで含めると、最適な変更月が変わることがあります。

税務と社会保険で「得する月」が逆になるケースがある

「税務上で得する月に変えれば大丈夫」と思っていませんか。実は、役員報酬の変更は社会保険料(健康保険・厚生年金)にも連動します。「何月に変えるか」で保険料が切り替わるタイミングが変わるため、税務だけで月を決めるとトータルで損するケースがあります。

役員報酬を変えると社会保険料も連動する

役員報酬が一定額以上変わると、「随時改定(月変)」と呼ばれる社会保険の手続きが発生します。報酬を変えた月から数えて4ヶ月後に、新しい保険料が適用されるのが原則です。

変更する月によって社会保険料の切り替わりタイミングがずれる

3月決算の会社で、4月から6月の間に報酬を増額する場合で考えてみましょう。

増額した月 3ヶ月平均の対象期間 新保険料が適用される月
4月 4・5・6月 7月から
5月 5・6・7月 8月から
6月 6・7・8月 9月から

増額すると社会保険料は上がります。「保険料が上がり始める月」が遅いほど、その年の手取りが多く残ります。

税務上の最適解と社会保険上の最適解は一致しないことがある

増額する場合の比較例(3月決算・月額50万円→70万円)

変更月 年間の法人税上の経費増 新保険料が始まる月
4月 240万円(12ヶ月分) 7月から
6月 200万円(10ヶ月分) 9月から

「税務上は4月が得」でも、増加する社会保険料まで合わせて計算すると、6月変更のほうがトータルで有利になるケースがあります。

この計算は、税務と社会保険の両方を同時に見られる専門家でなければ出てきません。

減額は税務・社保ともに「早い月」が有利

減額の場合は、税務と社会保険が同じ方向を向きます。

  • 税務上:早く減額するほど、会社に資金が早く残る
  • 社会保険:早く減額するほど、保険料の引き下げが早く始まる

税務・社保ともに、減額したいなら、変更できる期間の最初の月に動くのが原則の答えです。

「変更期間が来る前」に動いているかどうかが差になる

イデア総研では、顧問先に毎月訪問しているため、変更できる期間が始まる前に「今期の報酬をどうするか」を先回りで確認しています。「気づいたら3ヶ月が過ぎていた」という状況を防げるのは、定期的な接点があるからです。

加えて、グループ内に税理士法人と社会保険労務士法人を持ちます。「税務上の経費効果」と「社会保険料の変動」を同時に計算した上で、トータルで有利な変更月を提案できます。

3ヶ月を過ぎた変更が認められる例外は3つある

クリップボード上のチェックリストに虫眼鏡を当て、「Check」という項目とチェックボックスを精査している様子。検査、監査、品質管理、またはタスクの確認といった、細部にわたる丁寧なレビューを象徴する画像。

「期限を過ぎてしまった……」という場合でも、特定の事情に限り例外として認められるケースがあります。

ただし「業績が少し落ちた」「社長がそう思った」という程度では通りません。それぞれの条件を順に確認しましょう。

例外①:役職が大きく変わった場合は期中変更が認められる

法律では「臨時改定事由」と呼ばれます。

出典:法人税法施行令第69条第1項第2号イ

認められる場合
  • 副社長→社長など、役職が上がった
  • 社長→非常勤取締役など、役職が大きく下がった
  • 病気・ケガによる入院で職務への支障が生じた(または復職した)
  • 会社の合併・分社化など組織再編成が行われた
  • 不祥事や行政処分を受け、責任として役員報酬を減額した
  • 産休・育休による職務変更

税務調査では「役職名の変更と実態の変化の両方が書類で確認できるか」が問われます。議事録・組織図の変更記録を残しておくことが必須です。

例外②:著しい業績悪化でも第三者との関係がなければ認められない

法律では「業績悪化改定事由」と呼ばれます。

出典:法人税法施行令第69条第1項第2号ロ

この例外は「減額のみ」が対象です。業績悪化を理由に増額はできません。

認められるためには、次の2つをどちらも満たす必要があります。

  • 要件1:経営状況が著しく悪化していること
  • 要件2:株主・取引銀行・取引先など第三者との関係で、やむを得ず減額しなければならない事情があること
認められる具体的な例
  • 業績悪化に伴い、株主への経営責任として役員自ら報酬を減額した場合
  • 取引銀行との借入金リスケジュール(返済猶予)の協議で、役員報酬の減額を求められた場合
  • 業績悪化で経営改善計画を策定し、その計画の中に役員報酬の減額が盛り込まれた場合
  • 現状は悪化していないが、主要な取引先の経営が傾き、数ヶ月後の売上激減が客観的に確定している場合

金融機関との交渉記録・赤字決算書・経営改善計画書など、第三者が見て判断できる書類が必要です。

例外③:新任役員には3ヶ月ルールは適用されない

新たに役員に就任した場合は、就任後に定めた報酬額から毎月同額を支給すれば、事業年度のどのタイミングで就任しても問題ありません。

3ヶ月の変更期限は「既存の役員が報酬を改定する場合」のルールであり、新任役員には関係しません。

代表的な例
  • 後継者として息子・娘を役員に選任した場合
  • M&Aで新役員が加わった場合
  • 事業拡大に伴い新たに取締役を選任した場合

就任した月から金額を固定し、以降も同じ金額で払い続けることが条件です。途中から月ごとに違う金額を支給すると「毎月同額」の要件を外れます。

実務でよくある5つの誤解

黒いスーツとネクタイを着用した2人の人物が白いテーブルを挟んで向かい合っており、片方の人物が指を立てて強調している。

「自分はどうだろう」と照らし合わせながら確認してみてください。一つでも心当たりがあれば、変更前に確認することをおすすめします。

勘違い①:定期同額の判定は「振込額」ではなく「額面」で見る

判定の基準は振込額(手取り)ではなく、額面(総支給額)です。

たとえば、役員報酬を月100万円に設定していても、住民税の変動で6月以降の振込額が97万円になることがあります。

「振込額が変わったからまずいのでは?」と思うかもしれませんが、額面(100万円)が変わっていなければ問題ありません。

注意が必要なのは、「手取りを一定にしようとして源泉徴収を調整した結果、額面が月ごとに変わってしまった」場合です。経理担当者が振込額ベースで管理していると、この間違いに気づきにくくなります。

勘違い②:3ヶ月以内でも変更できるのは1事業年度に1回だけ

× 誤解:期首から3ヶ月以内なら、何回でも変更していい

期首から3ヶ月以内であっても、変更は1事業年度に1回しかできません。

○ 正しい理解:定期同額給与の変更は年に1回が原則

たとえば、3月決算で5月に月額50万円→60万円へ変更した後、「やっぱりもう少し上げたい」と8月にもう一度60万円→70万円へ変更したいとします。

例外(役職変更・業績悪化)に当たらなければ、差額10万円×残月数(8月〜3月の8ヶ月)= 80万円が経費にならない部分として扱われます。

勘違い③:1人株主の会社でも株主総会の決議手続きは省略できない

「自分1人しか株主がいないから、自分で決めればいいじゃないか」と思っていませんか。

1人会社でも「手続き」は必要です。ただし集まらなくてもOKで、全株主が書面で同意する「みなし決議」という方法があれば、総会の決議があったとみなされます。

書面がなければ、正しいタイミングで変更していても税務調査で否認されることがあります。

勘違い④:「業績が悪い」だけでは期中変更はできない

× 誤解:業績が悪化しているなら、期中でも役員報酬を変更できる

業績悪化を理由に期中変更するには、「著しい悪化」と「第三者との関係でやむを得ない理由」、この2つがそろっていることが条件です。

○ 正しい理解:「著しく悪化」+「第三者との関係でやむを得ない」の両方が必要

「売上が少し落ちた」「節税したい」では認められません。この要件を知らずに「業績が悪いから」という理由だけで期中変更してしまうと、変更分すべてが経費として認められなくなるリスクがあります。

勘違い⑤:後から作った議事録は「手続きの実態がない」として否認される

「議事録なんて後でまとめて作ればいい」と思っていると、大きなリスクになります。

税務調査では議事録の整合性は必ず確認されます。決議を行った当日に議事録を作成し、変更前後の金額・変更理由・適用開始日を明記するのが基本です。後日作成が発覚した場合、タイミングが正しくても「手続きの実態がない」として否認されることがあります(保管義務10年)。

まとめ:ルールの中で、得するタイミングを選ぼう

役員報酬の変更タイミングについて、押さえておきたいポイントを整理します。

  • 変更できる時期は「事業年度開始から3ヶ月以内」。期限を外すと差額分がまるごと経費にならない
  • 期限の基準は株主総会の開催日ではなく、新しい報酬を最初に振り込む日
  • 3ヶ月の中でも「早い月」に変えるほど経費になる金額が大きくなる(増額の場合)
  • 増額の場合、社会保険料まで含めると税務上の最適月とずれるケースがある
  • 減額は税務・社保ともに「早い月」が有利で、増額と違い計算の逆転は起きない
  • 業績悪化での例外変更は「著しい悪化」と「第三者との関係」の両方が必要

増額の場合、税務上で得する月と社会保険料で得する月がずれるため、「どこで変えるのが一番得か」は一概には言えません。それぞれの数字を並べて計算する必要があります。

イデア総研税理士法人では、税務と社会保険の両方をグループ内で対応しています。「いつ変えると税務・社会保険のトータルで最も得か」という計算から、株主総会の手続き・社会保険の随時改定まで、一つの窓口で相談できます。

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