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香典の勘定科目と仕訳例を解説|領収書がなくても出金伝票1枚で経費計上できる可能性も

香典の勘定科目と仕訳例を解説|領収書がなくても出金伝票1枚で経費計上できる可能性も | その他

香典を渡したあと、帳簿への入力で手が止まっていませんか? 「どの勘定科目を使えばいいんだろう?」「領収書がないけれど、本当に経費にして税務調査で突っ込まれない?」

結論から言うと、香典は「渡した相手」によって正しい勘定科目を使い分ければ、領収書がなくても出金伝票や代替書類で経費にできます。

この記事では、国税庁の指針や実務上のルールに基づき、税務調査でも説明に困らない「証拠の残し方」までを分かりやすく整理しました。

ご自身のケース(取引先・従業員・個人事業主)と照らし合わせながら、確認していきましょう。

この記事でわかること

  • 取引先・従業員・個人事業主別の正しい勘定科目と判断基準
  • すぐに使えるケース別仕訳例(借方・貸方・摘要つき)
  • 領収書がない場合に使える代替書類4種類と出金伝票の書き方
  • 消費税区分を「対象外」に設定する理由と方法
  • 高額な香典・経費にできないケースの判断基準
この記事を書いた人
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南 彰悟

1986年3月6日生まれ。大分県出身。早稲田大学を卒業後、25歳で公認会計士試験に合格。大手監査法人に8年程勤める。2020年税理士登録。イデア総研税理士法人の副代表として活動する。

香典の勘定科目は「渡す相手」で決まる

香典の勘定科目は、金額ではなく「誰に渡したか」という相手との関係性で判断します。

取引先など事業上の相手なら接待交際費、従業員やその家族なら福利厚生費が基本です。

香典を渡した相手 勘定科目
取引先(顧客・仕入先・外注先など) 接待交際費
従業員・役員(およびその家族) 福利厚生費
個人事業主が取引先 接待交際費
個人事業主が従業員(およびその家族) 福利厚生費

取引先への香典は「接待交際費」

取引先や顧客、仕入先、外注先など、仕事関係の相手に渡した香典は「接待交際費」です。

ポイント:現在取引がある相手だけでなく、「近い将来に取引を行う予定の関係者」への香典も接待交際費に含めることができます。ただし、事業との関係性を説明できることが前提です。

注意点

法人の場合、接待交際費には損金算入(経費として認められる枠)の上限制限があります。

なお、飲食費については、これとは別に「1人あたり1万円以下なら交際費から除外できる」という基準もありますが、香典は飲食費ではないため対象外となり、金額にかかわらず接待交際費として扱われます。

出典:国税庁No.5261

参考:国税庁税務大学校「交際費等の意義と範囲」

帳簿に計上できても、その全額を税務上の損金にできるとは限らない点も含め、詳しくは以下の記事をあわせてご覧ください。

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従業員への香典は「福利厚生費」

自社の役員・従業員、およびその配偶者・親族への香典は、一定の基準に従って支給する場合に「福利厚生費」として処理します。

ポイント:「一定の基準に従って」という条件が必須。税務署に正当な福利厚生費として認めてもらうには、社内の慶弔規定(慶弔見舞金規定など)に基づき、全従業員に対して概ね一律に運用されていることが必要です。

注意点

慶弔規定がなく、特定の役員だけに高額な香典を出した場合は、経費(福利厚生費)ではなく「その人への給与・賞与」とみなされ、所得税の課税対象になるリスクがあります。

一貫した社内ルール(慶弔規定)を整備しておくことで、担当者が変わっても迷わず、税務調査時にもしっかりと説明できます。

出典:国税庁No.5261

個人事業主の場合

個人事業主が、取引先や顧客、外注先など「仕事関係の相手」に渡した香典は、「接待交際費」として必要経費に計上できます。

記帳する前に、法人との違いや個人事業主ならではのルールを整理しておきましょう。

ポイント:法人と違って、個人事業主の接待交際費には税法上の上限額(経費にできる枠の制限)がありません。 ただし、いくらでも経費にしていいわけではありません。

支出の全額が自動的に経費になるのではなく、「本当に事業に関係があるか」「金額は妥当か」が厳しく判断されます。当然、仕事と関係のない友人や親戚への香典は必要経費になりません。

注意点

事業主と生計を一にする「家族専従者」だけで事業を行っている場合、その家族(専従者)への香典を「福利厚生費」として経費にすることはできません。福利厚生費は、雇用している第三者の従業員がいて初めて認められる勘定科目だからです。

仕事上の関係であることを税務署に証明するため、会計ソフトに入力する際は、摘要欄に「相手の氏名」や「取引先名・具体的な関係性」を必ず記録しておきましょう。

仕訳は決めた勘定科目をそのまま使うだけ

青いマーカーで「勘定科目」が強調された会計帳簿

勘定科目が決まったら、以下の仕訳例を参考にしてそのまま会計ソフトに入力してください。

借方・貸方・金額・摘要の4種類で整理しています。

取引先への香典は「接待交際費」で仕訳する

金額は相手の役職や関係性によって変わります。以下は一例で、具体的な相場は後述の役職別の目安を参考にしてください。

摘要欄には「香典代」「相手先の氏名・会社名」「ご逝去の旨」を記載しておくと、税務調査時に説明しやすくなります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
接待交際費 30,000円 現金 30,000円 香典代(○○株式会社 ○○様ご逝去)
接待交際費 10,000円 現金 10,000円 香典代(○○様ご逝去)

従業員・家族への香典は「福利厚生費」で仕訳する

従業員本人だけでなく、その配偶者や親族への香典も、同じ「福利厚生費」で処理します。

退職した元従業員を対象に含める場合は、慶弔規定の対象範囲と運用実態に沿って判断します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
福利厚生費 30,000円 現金 30,000円 香典代(○○ご逝去)
福利厚生費 10,000円 現金 10,000円 香典代(○○様配偶者ご逝去)
福利厚生費 50,000円 現金 50,000円 香典代(副社長ご家族ご逝去)

個人事業主の香典も「接待交際費」で仕訳する

貸方科目は、支払いに使った資金によって変わります。

事業用の資金と事業主個人のお金を分けて記録するためで、プライベートの手持ち現金から支払った場合は「事業主借」、小口現金なら「現金」、事業用口座からの支払いなら「普通預金」を使います。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
接待交際費 10,000円 普通預金 10,000円 香典代(取引先○○様ご逝去)/事業用口座から支払い
接待交際費 10,000円 事業主借 10,000円 香典代(取引先○○様ご逝去)/手持ちのプライベート現金から支払い

香典が経費にならないのは「会社と関係のない支出」のとき

バツ印のポーズをとるスーツ姿の人物

勘定科目と仕訳例が確認できたら、入力前に以下を確認しておきましょう。

経費として認められないのは、次のようなケースです。

  • 社長や役員が「個人的な付き合い」で私費から出し、会社が負担していないもの
  • 香典袋に社名があっても、会社負担や事業との関係を説明できないもの
  • 事業とまったく無関係な、社長の個人的な友人・知人・身内への香典
  • 家族経営(専従者のみ)の個人事業主が、身内に対して出した香典(福利厚生費での計上は不可)

反対に、香典袋に書いた名義が「社長個人名」であっても、「実態として会社がそのお金を負担したか」「その相手が事業に必要な関係者か」がしっかり説明できれば、会社の経費として処理して問題ありません。

実際の支出内容によって判断が変わる場合がありますので、迷ったときは一度税理士にご相談いただくことをお勧めします。

領収書がなくても出金伝票などの記録で経費処理できる

お葬式という性質上、香典に対して通常は領収書が発行されません。

その場合は自社で出金伝票を作成し、葬儀の案内状や会葬礼状などの葬儀の事実を示す資料と一緒に保管しておくと、支出の事実を税務調査でも説明しやすくなります。

経費の根拠として手元に残すべき4つの代替書類

領収書が出ない代わりに、以下の書類のうち手に入るものを保管しておきましょう(複数あればあるほど、証拠としての信頼性が高まります)。

  • 葬儀の案内状・訃報通知:喪主の名前、お通夜や告別式の日程、場所が記載された紙。メールやLINEで届いた訃報をプリントアウトしたものでも有効です。金額や相手との関係を書き添えておくと、後から見返しやすくなります。
  • 会葬礼状(会葬御礼状):葬儀に参列した際、受付で手渡されるハガキサイズのお礼状です。相手方が発行した書類であるため、極めて高い客観的証拠になります。
  • 香典袋のコピー:表書き・氏名・日付が確認できるものを残しておきます(封筒のコピーを取っておく)。
  • 出金伝票:自社で作成する記録です。上記①〜③が手元にない場合でも、出金伝票に加えて、手元にある訃報通知や当日のメモなども一緒に保管しておくと税務調査の時も安心です。

出金伝票には「日付・金額・相手先・内容」の4項目を書く

出金伝票は、会社が現金を支出した事実を社内で記録するための書類です。文房具店や100円ショップで購入できるものでも、Excelなどの無料テンプレートから印刷したものでも構いません。

決まった書式はありませんが、「いつ、いくら、誰に、何のために支払ったか」が後から客観的に分かるように記入します。

記録すべき項目は次の4つです。

  1. 日付:香典を実際に手渡した、または郵送した年月日
  2. 金額:香典として包んだ金額
  3. 相手先:相手の氏名・会社名・会社との関係性
  4. 内容(摘要):支出の理由

記入例

項目 記入内容
日付 令和○年○月○日
金額 30,000円
相手先 株式会社○○ ○○様(取引先担当者)
内容 ○○様ご逝去に際しお香典として(告別式参列)

可能であれば、案内状などに載っていた葬儀場(セレモニーホール等)の名前も摘要欄にメモしておくと、支出の客観性がさらに高まります。

作成のタイミングは、香典を渡した日のうちが理想です。後日まとめて作成する場合は、手帳のメモや訃報通知と一緒に保管しておきましょう。

なお、領収書を受け取れる場面(供花や弔電の支払いなど)でわざと受け取らないのはNGです。出金伝票はあくまで「領収書が物理的に手に入らない場合」の救済措置として使用してください。

会計ソフトへの入力前に確認!「消費税区分」と「金額の妥当性」

勘定科目・仕訳・証拠書類の準備ができたら、会計ソフトへ入力する前に以下の2点を確認してください。

消費税区分は原則「不課税(対象外)」に設定する

香典は消費税の課税対象外です。会計ソフトでは原則として「対象外」を選びます。

ソフトによって表示名が異なるため、「不課税」と表示されている場合は、その区分が課税対象外を意味するか確認しましょう。「課税仕入」「非課税仕入」としての処理は誤りです。

なぜ「不課税」なのか

消費税は「対価を得て行う取引(商品を買う、サービスを受けるなど)」に課されるものです。香典はお返しを求めない「贈与(お祝い金や見舞金、寄付金も同様)」であるため、そもそも消費税の課税対象になりません。これが「対象外(不課税)」と呼ばれる理由です。

会計ソフトで入力する際、間違いやすい「非課税」との違いは以下の通りです。

  • 対象外(不課税):香典やご祝儀など、そもそも消費税の計算ルールの「枠外」にあるもの
  • 非課税:医療費や土地の購入など、ルール上は対象だけれど「国の配慮として特別に税金をとらない」と決めているもの

香典を誤って「非課税仕入」で処理してしまうと、後々の消費税申告に影響する可能性があります。

参考:国税庁「消費税法基本通達5-2-14 寄附金、祝金、見舞金等」

参考:国税庁「No.6209 非課税と不課税の違い」

香典は消費税の課税対象外取引であるため、インボイス(適格請求書)の受領や保存は一切不要です。

なお、葬儀の際に手配した「供花(生花)」や「弔電(電報)」は課税取引(消費税10%)となるため、香典とは消費税の区分が異なる点に注意してください。

香典の金額は「社会通念上の範囲内」に収める

香典の金額があまりにも高額すぎると、税務調査で「経費ではなく、役員への給与や特定の人への個人的な贈与だ」とみなされて否認されるリスクがあります。

また、高額な場合は、贈与者が法人なら所得税、個人なら贈与税が受け取った側に課される可能性があります。

以下は、取引先への香典における一般的な相場の目安です。

故人の役職(取引先) 香典の相場
創業者・会長・社長 30,000〜100,000円
副社長・役員 10,000〜100,000円
会長や社長のご家族・ご親戚 10,000〜50,000円
取引先の担当者 5,000〜30,000円

参考:楽楽精算「香典の勘定科目とは?仕訳方法や経費計上のポイント、注意点

具体的な法定上限はありませんが、一般的なお付き合いであれば10万円以内が「社会通念上の範囲内」として認められやすい目安となります。

もし10万円を超えるような特別な高額香典を出す場合は、「なぜその金額にしたのか」を説明できるよう、会社としての決済書類や明確な社内規定をより丁寧に用意しておく必要があります。

まとめ:今日の経費処理を安全に完了するためのチェックリスト

以下の5点が確認できれば、今日の処理は完了です。

この記事のポイント

  • 勘定科目は取引先なら「接待交際費」、従業員なら「福利厚生費」
  • 仕訳の摘要欄に香典代・相手先・ご逝去の旨を記録する
  • 証拠書類(会葬礼状・出金伝票など)を保管する
  • 消費税区分は原則「対象外」を選ぶ
  • 金額が社会通念上の範囲内か、経費NGケースに該当しないかを確認する

香典の経費処理では、「誰への香典か」と「会社として負担したか」が主な判断軸です。領収書がない場合は、出金伝票と手元にある客観的な資料を保管し、消費税区分と金額の妥当性を確認してから会計ソフトに入力します。

なお、お祝い金(ご祝儀)や贈答品(お歳暮・お中元等)も、「仕事関係の相手か」「会社として負担したか」が判断基準になる点は香典と同じです。ただし、物品の贈答は領収書や消費税の扱いが異なるため、香典と全く同じ入力処理にはならない点だけご注意ください。

今回のような単発の支出であれば、ここまでの手順に沿って処理を進められます。 しかし、社内に明確な「慶弔規定」がないと、毎回「いくら包むべきか」「これは経費にしていいのか」と担当者が頭を悩ませることになります。特に、個人名義で渡した香典などは、会社の経費なのか社長個人の支出なのか、税務調査の際に境界線が曖昧になりがちです。

イデア総研税理士法人では、個別の経費処理だけでなく、「税務調査でも説明しやすい慶弔規定」の作成まで、幅広くご相談を承っています。「毎回迷う時間をなくしたい」「自社に合った確実なルールを作りたい」という方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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