投稿日:2026.04.13 最終更新日:2026.04.13
交際費の「1万円ルール」を噛み砕いて解説!計算方法から書類保存の抜け漏れリスクまで!
「交際費の飲食費基準が1万円になったらしいけど、うちはどうなるんだろう…?」そういった疑問を持ちながら、“なんとなく”で処理を続けているケースは珍しくありません。
交際費の1万円ルールで飲食費を除外するには、「1人あたり10,000円以下の計算」と「5つの書類の保存」の両方が必要です。
どちらか一方が欠けていても、除外は認められません。さらに、1円でも超えると飲食費の全額が“交際費”になります。
令和6年4月1日から新基準が適用されていますが、まだ旧基準のままのシステムや書類不備が残っているケースも実際にあります。
この機会に、自社の処理を順番に確認していきましょう!
- 令和6年4月からの改正内容と新基準の適用タイミング
- 「1人あたり」の正しい計算方法(3パターンのシミュレーション)
- 1万円超過で全額が交際費になる仕組みと注意点
- 書類保存に必要な5つの確認項目
- 中小企業・大企業それぞれの損金算入上限
南 彰悟
1986年3月6日生まれ。大分県出身。早稲田大学を卒業後、25歳で公認会計士試験に合格。大手監査法人に8年程勤める。2020年税理士登録。イデア総研税理士法人の副代表として活動する。
そもそも:「交際費の1万円ルール」とは?
【前提知識】交際費=“接待関連すべて”にまつわる費用
交際費等とは、得意先や仕入先など事業関係者への接待・供応・贈答などのためのすべての支出を指します。
交際費というのは法人税法上、原則として全額が“損金不算入”というのが基本的な位置づけ。噛み砕いていうと『経費として計上できない』ということになります。
ただし特例もあり、資本金1億円以下の中小企業であれば、交際費等の損金算入において「年間800万円までの全額損金算入」または「飲食費の50%損金算入」のいずれかを選択することが可能です。
上記はあくまで特例ですので、基本的なルールとして『交際費=経費にならない』と覚えておきましょう。
【ここがポイント】交際費から外れた“飲食費”は経費にできる!
実は一定の要件を満たした飲食費については「交際費等の範囲から除外できる」仕組みがあります。
除外された飲食費は損金算入の制限を受けないため、結果として「1万円までの飲食代」を経費として処理できます。これが「1万円ルール」の本質です。
つまり「1万円ルール」とは、1人あたりの飲食費が10,000円以下で、必要な書類を揃えれば、その飲食代を交際費の対象から外して全額を経費にできる仕組みのことです。
国税庁(No.5265)では、交際費等から除かれる費用として、次の条件を満たす飲食等が明示されています。
飲食費を交際費から外す条件
- 社外の事業関係者が参加する飲食等であること(社内のみはNG)
- 参加者全員の人数で支払総額を割った「1人あたり」の金額が10,000円以下であること
- 所定の書類を保存していること
令和6年4月から「5千円→1万円」に引き上げされた
先ほど「1人あたり10,000円以下」とお伝えしましたが、もともとの上限は5,000円でした。令和6年4月1日以後に支出した飲食費から、引き上げ後の基準が適用されるようになりました。
この改正は国税庁の資料にも明記されており、令和6年度の税制改正によって決定されました。
【改正前後の対比】
| 区分 | 1人あたりの基準 | 適用時期 |
|---|---|---|
| 改正前 | 5,000円以下 | 〜令和6年3月31日の支出まで |
| 改正後 | 10,000円以下 | 令和6年4月1日以後の支出から |
実務上で注意したいのが、経費精算システムや社内規程が旧基準(5,000円)のままになっているケースです。
決算期によっては「同一事業年度内に旧基準と新基準が混在する」状況が生じることもあります。
9月決算の法人であれば、令和5年10月〜令和6年3月は5,000円基準、令和6年4月〜9月は10,000円基準での判定になります。
改正されたのは知っていたが、システムの設定が追いついていなかった…
こういった声は珍しくありません。今一度、自社の経費精算ルールと運用を確認しておきましょう。
交際費と似た費用に『会議費』というものがあります。
社外での打ち合わせを行うための「会議室利用料」をはじめ、打ち合わせや会議を行うことに関連する費用は、原則上限なしで全額を損金算入できます。
実は“会議費”にあたる飲食代もある
会議費に含まれる飲食代の典型例は、社内外の打合せや会議の場で提供する「コーヒー」や「お茶」、「お菓子類」などです。
コーヒーやお菓子は“飲食物”ではありますが、会議を円滑に進めるための必要経費。つまり「会議に必要だった飲食物」として全額経費精算が可能になるというわけです。
ちなみに1万円ルールで対象となる「飲食代」とは、得意先や取引先を招いての会食・接待のことです。つまり要点としては、
- 正式な会議中に「飲食」が発生した … 『会議費(会議がメインなため)』
- 接待を主目的とした飲食中に「会議・議論」が発生した … 『飲食費(飲食がメインなため)』
上記のような視点を持って計上されることを覚えておきましょう!
「1人あたり1万円以下」の計算は正しくできているか?
1万円ルールを実際に使うには、「1人あたり10,000円以下かどうか」を正しく判定する必要があります。ここで間違いやすいのが「1人あたり」の計算方法です。
3つの判定パターンと、超えた場合の取り扱いまで順番に確認します。
1人あたり1万円 =“費用総額÷合計人数”が1万円以内であること!
「1人あたり10,000円以下」の「1人」とは、自社側の参加者だけを指すのではありません。
国税庁の整理では、「支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額」とされており、自社の役員・社員と取引先の参加者を合わせた人数で割ります。
また、参加者が実際にどの程度飲食したかにかかわらず、“その場にいた人数”で割ります。「あの方は少ししか召し上がっていなかったから…」といった調整はできません。
たとえば4名で40,000円なら1人あたり10,000円でぎりぎり基準内、4名で42,000円なら10,500円で基準超となり全額が交際費になります。
【注意】“参加人数の記録”が不可欠!
飲食後に人数を思い出そうとしても、正確な記録が残っていないと判定できません。これは後述する「書類保存の要件」とも直結するポイントです。
対象となる飲食の範囲にも確認が必要です。専ら役員や従業員・親族だけで行う社内飲食は対象外になります。
「形式的に社外の人を参加させた」と判断されるケースも同様です。
「税込み or 税抜き」でも判定が変わる
同じレシート金額でも、自社が採用している消費税の経理方式によって1万円判定が変わることがあります。
国税庁は、「一万円判定は、法人が採用している消費税の経理処理(税抜経理方式/税込経理方式)によって算定した価額で行う」と整理しています。
【判定フロー】
自社は税込経理?
├─ YES → 税込金額が10,000円以下か?
└─ NO(税抜経理)→ 税抜金額が10,000円以下か?
数字を当てはめて確認します。
税込10,780円(税抜9,800円)の飲食費が1人分だった場合、税込経理であれば10,780円として判定するため基準超となり、全額が交際費です。
税抜経理であれば9,800円として判定するため基準内で、除外できます。
同じ飲食でも、経理方式によって結果が変わります。まず自社の経理方式を確認してから判定するようにしましょう。
1円でも超えると、飲食費の全額が交際費になる
1人あたりが10,000円を『1円』でも超えると、その飲食費の全額が交際費として処理されます。
「超えた分だけ交際費にして、残りは除外できる」という比例配分はできません。
たとえば4人で42,000円の飲食をした場合、1人あたり10,500円で基準超となり、42,000円の全額が交際費です。
同じ会食を複数回の支払いに分けるなど、基準を下回らせようとする処理は、国税庁のQ&Aで「一体の行為と認められる場合は全体で判定する」とされています。
人数の記載を実際より少なく書いたり、書類を意図的に分割したりすることは、税務調査で「意図的な隠蔽」として否認の対象になります。くれぐれも注意してください。
1万円を超えた交際費については、会社規模によって異なる損金算入上限が適用されます。
計算が正しくても書類がなければ除外できない?書類に必要な5つの確認項目
計算上は1人あたり10,000円以下を満たしていても、書類が揃っていなければ交際費から除外できません。
「計算は合っていたのに、書類不備で認めてもらえなかった」というのは、実際に起きやすいパターンです。
何を、どこに残せばいいのか。5つの確認項目を順番に整理します。
【全5項目】これらすべてを揃える・保存する必要あり!
国税庁(No.5265)が明示する保存事項は、次の5項目です。
□ 飲食・接待を行った日付(年月日)
→ 実際に飲食が行われた日を、年月日まで記録します。「10月」のような月単位の記録では認められません。
□ 参加した取引先・得意先の氏名(会社名)と自社との関係
→ 接待を受けた側(得意先・取引先)の氏名と、自社との関係(例:○○株式会社 営業部長 ○○様)の記録が必要です。接待した自社側の参加者氏名は必須ではありませんが、人数と整合が取れるよう控えておくと安心です。
□ 飲食への参加人数(全員の合計)
→ 自社・取引先を含めた全員の合計人数です。1人あたりの金額計算の基準になるため、正確な記録が欠かせません。
□ 支払金額・飲食店の名称と住所
→ 支払総額と、利用した飲食店の店名・住所です。領収書で確認できることがほとんどですが、住所の記載がない場合は補記が必要です。
□ 飲食の目的(どの得意先と、何のための会食か)
→ 上記4項目を補完する情報です。経費精算書の備考欄に「○○社との打合せ後の会食」など会食の目的を一言添えておくと、税務調査でもスムーズに説明できます。
この5項目すべてが揃って初めて「除外できる」という状態になります。1つでも欠けていれば、1人あたりが10,000円以下であっても除外は認められません。
また書類の様式は法定されていません。
必要事項が揃っていれば、経費精算書・稟議書・会食メモなど、自社で使いやすい形式で保存して問題ありません(国税庁Q&Aに明記されています)。
なお、記録が必要なのは主に社外の得意先等の情報です。自社の役員・従業員の氏名まで一律に書く必要はなく、「社内だけの飲食ではないこと」が確認できれば十分です。
領収書だけでは不足!参加者情報は自分で記録する
飲食店の領収書には、通常「日付」「金額」「店名」程度は記載されています。しかし5項目のうち「取引先の氏名・関係」と「参加人数」は、領収書に記載されないケースがほとんどです。
これが「領収書だけでは足りない」理由です。
実務上は、経費精算書(申請書)や会食メモに参加者情報・人数を記録するのが一般的です。
「5項目のうち3つは領収書で確認できても、残りの2つは自分で記録しないと揃わない」と覚えておくと、抜け漏れを防ぎやすくなります。
税務調査での否認理由として、「記録がない」「誰と行ったかわからない」という書類不備が挙げられます。
自社の精算フローの中で、5項目を埋める設計にしておくことが大切です。
まとめ:交際費1万円ルールの運用に迷ったら、税理士へ確認を!
1万円ルールで飲食費を交際費から除外するには、「1人あたり10,000円以下の計算」と「5つの確認項目の書類保存」の両方が必要です。
どちらかひとつが欠けても、除外は認められません。
- 令和6年4月から1人あたり10,000円以下が新基準(旧基準は5,000円)
- 人数割りは自社・取引先の合計人数で計算する(飲食量は無関係)
- 1円でも超えると全額が交際費になる(比例配分はできない)
- 書類は領収書だけでは不足。参加者情報と人数の記録が必要
- 中小企業は800万円枠か飲食費50%枠のどちらか有利な方を選べる
実務でよくあるのは、制度を知っていても運用が追いついていないケースです。令和6年4月以後も精算システムが旧基準のままだったり、書類に参加者情報が抜けているのは珍しくありません。
- 精算ルールの更新
- 参加人数の記録方法
- 書類の5つの確認項目
この3点が整えば、日常の処理でミスは起きにくくなります。「うちは大丈夫かな」と少しでも気になったなら、一度確認してみてください。
またこうした判断は、経験のある税理士がそばにいるかどうかで大きく変わります。
当社では経費ルールの管理のような形式だった対応だけでなく、『経営のパートナーであること』こそ、税務顧問としてあるべき姿だと考えています。
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ご不明点があればぜひ一度ご相談ください。