投稿日:2025.09.25 最終更新日:2025.10.10
ここだけはチェック!税理士変更時に見るべき“契約内容”を専門家が解説!

「今の税理士、料金体系が少し分かりにくいな…」「どこまでが顧問料の範囲なんだろう?」
税理士の変更を考え始めると、次こそは失敗したくないという気持ちから、新しい契約に対して不安を感じる経営者は少なくありません。
結論からいうと、次の税理士選びで後悔しないためには、面談前の準備から契約書を交わすまでの各ステップで、確認すべき項目を一つひとつ着実にクリアしていくことが大切です。
この記事では、税理士変更で二度と失敗したくないと願う経営者の方へ、新しい税理士との契約内容で見るべきポイントを解説します!
- 税理士との契約内容を確認すべき本当の理由
- 新しい税理士との契約までの具体的な流れと7つのステップ
- 面談前・面談時・契約直前の各段階で確認すべき必須チェックリスト
- 契約後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐための最終確認ポイント

南 彰悟
1986年3月6日生まれ。大分県出身。早稲田大学を卒業後、25歳で公認会計士試験に合格。大手監査法人に8年程勤める。2020年税理士登録。イデア総研税理士法人の副代表として活動する。
【大前提】税理士変更で「契約内容」を確認をすべき理由
税理士変更を考え始めたばかりの方へ。実は、変更でもっともつまずきやすいのが「次の税理士との契約」です。ここでは、なぜ契約内容の確認があなたの事業の未来を守る上でこれほど重要なのか、よくある失敗事例を交えながら解説します。
理由①:想定外の「追加料金」を防ぐため!
- 記帳代行も顧問料に含まれると思っていたら、別途高額な請求が来た…
- 簡単な経営相談は無料だと思っていたのに、相談料を請求された…
- 決算月に、顧問料とは別に高額な決算料を請求されて驚いた…
これらは、税理士との契約内容の確認不足から生じる、典型的な金銭トラブルです。
契約時に報酬体系を細かく確認しなかったことが原因で、「こんなはずではなかった」という事態に陥ってしまうのです。
具体的には、契約前に料金体系が明記された見積書や契約書を取り交わし、月々の顧問料に含まれるサービスと、別途料金が発生する可能性のある業務(例:年末調整、税務調査の立ち会いなど)を一つひとつ確認する作業が不可欠です。後から不信感を抱くことのないよう、どの業務に、いくら費用がかかるのかを事前に明確にしておく必要があります。
理由②:業務範囲の「言った・言わない」をなくすため!
契約書は、税理士と経営者の両方を守るための大切なルールブックです。
「どこまでが業務範囲か」を事前にしっかり確認・合意しておくことが、無用なトラブルを避け、信頼関係を築く土台となります。口頭での確認だけでなく、必ず契約書に「業務範囲」として具体的な項目を明記してもらいましょう。
例えば「月次試算表の作成および報告」「年末調整業務」など、依頼したい業務をリストアップし、それが契約書に含まれているかを確認するひと手間が、後のトラブルを防ぎます。
「記帳代行もやってもらえると思っていたら、実際は会計ソフトへの入力は自社でおこなう契約だった」というような認識のズレは、想定外の手間を増やし、本業に支障をきたすことにもなりかねません。
そのため業務範囲をしっかり見ておく必要があるのです。
新しい税理士との契約手順は?
契約内容の確認の重要性をご理解いただいたところで、次におこなうべきことの全体像を掴みましょう。
ここでは、新しい税理士との契約に至るまでの全7ステップを具体的に解説します。この流れを頭に入れておくことで、迷わずスムーズに変更手続きを進められます。
1. 依頼したい“業務範囲”を洗い出す
まずは、現在の税理士への不満や、新しい税理士に期待することを整理し、依頼したい業務の範囲を明確にします。
なぜなら、自社のニーズが曖昧なままでは、どの税理士が最適か判断できないからです。記帳代行、節税相談、経営アドバイスなど、期待するサービスを具体的に書き出すことが、後々のミスマッチを防ぐための最も重要な第一歩となります。
2. 次の税理士事務所を探す(推奨:3社以上)
インターネット検索や知人からの紹介などで、自社の状況に合いそうな税理士事務所を3社程度リストアップします。
これは、1社だけで判断すると、その事務所の料金やサービスが適正なのか客観的に評価できないためです。複数の候補を比較することで、自社にとっての「当たり前」の基準ができ、より良い選択が可能になります。
ホームページなどで専門分野や実績を確認し、候補を絞り込みましょう!
3. 初回相談で「相性」と「見積もり」を比較する
候補の事務所と面談し、自社の状況を説明して相談します。
税理士は事業の根幹に関わる数字を扱う、いわばビジネスパートナーです。そのため、専門性だけでなく、経営者が「この人になら何でも相談できる」と感じられるかどうかが極めて重要になります。業務範囲と見積もりを提示してもらい、サービス内容、費用感、そして人柄の相性などを総合的に比較検討しましょう!
4. 新しい税理士業者と契約する
比較検討の結果、もっとも相性が良いと判断した税理士と契約を締結します。 口約束はトラブルの元です。後から「言った・言わない」という問題に発展させないために、必ず書面で契約を交わします。後述するチェックリストを参考に、契約書の内容は隅々まで確認し、納得した上でサインしましょう。
5. 今の税理士と「解約申請」を行う
新しい税理士との契約が完了したら、現在の税理士に解約の意向を伝えます。
税理士がいない空白期間を作らないように、必ず次の契約先を決めてから解約を申し出るのが鉄則です。
感情的にならず、これまでの感謝を伝えた上で、ビジネスライクに進めるのが円満解約のコツです。契約書で定められた期限(例:3ヶ月前)までに申し出る必要がある場合が多いため注意が必要です。
6. データを引き継ぎ、権限を移管する
現在の税理士から過去の申告書データや会計データを受け取り、新しい税理士に渡します。
新しい税理士があなたの会社の状況を正確に把握し、適切な税務・会計サービスを提供するためには、過去のデータが不可欠だからです。
会計ソフトのデータや、すべての取引が記録された会計の基本台帳である総勘定元帳、各種届出書の控えなど、スムーズな引き継ぎができるよう協力しましょう。電子申告(e-Tax)などを利用している場合は、権限の移管手続きも忘れずにおこないましょう!
7. 新体制での運用をスタートする
新しい税理士との顧問契約がスタートします。
月次のやり取りなどを通じて、密なコミュニケーションを心がけ、一日も早く信頼関係を築くことが、今後の事業成長を加速させる鍵となります!
契約交渉を有利に進める2つの準備!
ここでは、契約交渉を有利に進めるための「事前準備」について、2つのポイントに絞って解説します。
ポイント1:今の税理士から「なぜ変えたいのか?」を言語化しておく
変更理由や要望が曖昧なままでは、次の税理士に対しても同じ不満を繰り返す可能性が高いです。
例えば…、
- 連絡してもレスポンスが遅い…
- 定例業務だけで「節税提案」がない…
などなど、現在の不満を書き出し、それを裏返して「チャットで気軽に相談したい」「決算前に節税の選択肢を提示してほしい」といった具体的な要望に落とし込む作業が重要です。
この準備が、面談での確認項目を的確に伝え、ミスマッチを防ぐための土台となります。
ポイント2:「過去2〜3期分の決算書」を用意する
税理士の顧問料は、会社の売上規模や取引の複雑さによって変動します。そのため、客観的な数字を示す資料がなければ、税理士も正確な見積もりを出すことができません。
過去2〜3期分の決算書を準備しておくことで、初回面談から具体的な料金やサービス内容の話ができ、後から「こんなはずではなかった」というズレを防ぐことができます。あわせて現在の契約書があれば、サービス範囲や料金を比較する材料として役立ちます。
契約する前|最後に確認すべき「3つ」のこと!
面談を終え、いよいよ契約です。こ契約書にサインする前に、最後の砦として確認すべき3つのポイントをお伝えします!
1. 「見積書」と「契約書」の内容は一致しているか
口頭や見積書で合意したはずの内容が、契約書に正しく反映されているとは限りません。
悪意はなくとも、単純な転記ミスや認識のズレが隠れている可能性があるため、必ず突合して確認しましょう。
特に、顧問料、決算料、業務内容、契約期間の4点は入念にチェックしてください。もし少しでも相違があれば、サインする前に必ず指摘し、修正してもらうことが、後々のトラブルを防ぐ上で不可欠です!
2. 契約書に「聞いていない項目」はないか
契約書は、税理士側が用意したテンプレートがベースになっていることがほとんどです。
そのため、“自社には当てはまらない”ような、一方的に不利な条件が説明なく含まれているケースも考えられます。
サインをしてしまえば、そこに書かれた内容に同意したことになります。責任の所在や免責事項、解約・違約金に関する条項など、少しでも違和感や不明点があれば放置せず、その意図を必ず確認しましょう!
3. 不明点は些細なことでも質問し、回答を記録しておく
「こんなことを聞いたら失礼かな」と遠慮する必要はまったくありません。なぜなら、契約前の疑問点をクリアにすることが、税理士との信頼関係を築く第一歩だからです。
丁寧な質問に誠実に答えてくれない税理士は、契約後もコミュニケーションに苦労するかもしれません。疑問点をリストアップし、メールなどで質問して書面で回答をもらうことが、後々の「言った・言わない」トラブルを防ぐ上で非常に重要です!
まとめ:未来の経営を強くするためにも「疑問点・不安点」は必ずチェックしましょう!
ここまで、税理士変更で失敗しないための契約内容の確認方法について、具体的なステップに沿って解説してきました。
税理士との契約は、単なる経理のアウトソーシングではありません。「事業の未来を共に創るパートナーとの約束」です。良い税理士と適切な契約を結ぶことが、今の会社を成長させる力強い伴走者を得ることにつながります。
- 税理士変更の失敗は、「追加料金」と「業務範囲」の認識のズレから生まれる。
- 契約までの流れを把握し、「面談前」「面談時」「契約直前」のステップごとに準備・確認を進めることが重要。
- 初回面談では、10のチェックリストを参考に、聞き漏らしなく質問する。
- 契約書にサインする前には、見積書との相違や「聞いていない項目」がないか最終確認を徹底する。