投稿日:2025.07.30 最終更新日:2025.08.01
「不満or企業成長」で時期も違う!税理士変更を検討すべきタイミングを税理士が解説!

税理士の変更を考え始めたとき、多くの経営者が「一体、いつ動くのがベストなんだろう?」という疑問に突き当たります。
決算が終わった後が良いと聞くけれど、本当にそれでいいのか。 今の税理士には不満もあるし、かといって長年の付き合いを考えると、なかなか切り出しにくい。 そんな風にタイミング探しだけで疲れてしまっていませんか。
実は、税理士変更のタイミングに、たった一つの「正解」はありません。 会社の未来を考えたとき、今のパートナーでは物足りないと感じたなら、それがあなたにとっての最適なタイミングです。
- 自社にとってベストなタイミングを見極める「判断軸」
- 後悔しない税理士の選び方と見極め方
- 円満な契約解消のための伝え方とコツ

イデア総研税理士法人担当者
【大前提】税理士変更は「時期」ではなく「理由」で決めるべき!
「税理士を変更するのに最適な時期はいつですか?」この問いに対して、「決算申告が終わった直後」と答える専門家の方が多くいらっしゃいます。
確かに決算申告後は、業務の区切りが良く、引継ぎがスムーズに進むため、一つの理想的なタイミングではありますよね。
しかし、私たちは「いつ変えるか」というタイミング以上に、「なぜ変えるか」という理由こそが、後悔しないために最も重要だと考えています。
なぜなら、もし今の税理士に不満を抱えているのであれば、“形式的なタイミングを待つこと”自体が、会社の成長にとってリスクになりかねないからです。
タイミング探しで消耗する前に、まずはあなたの会社が「なぜ」税理士の変更を必要としているのか、その根本的な理由を明らかにすることから始めましょう。
その理由は、大きく分けて次の2つのどちらかではないでしょうか。
- ケース1:現在の税理士への「不満」が理由
- ケース2:「事業フェーズの変化」が理由
まずはご自身の状況がどちらに近いか、あるいは両方当てはまるのかを明らかにすることが大切です。
ケース1:今の先生への「不満」が理由の場合
日々の業務の中で、顧問税理士に対して「これって普通なのかな?」と感じる不満が積み重なっていけば、変更を考えるのは当然のことです。 具体的には、以下のような不満が挙げられます。
コミュニケーション・レスポンスが遅い・無い
経営上の判断にはスピードが求められます。
それなのに、「資金繰りの急な相談をしたいのに、何日も返事がない」「質問をしても『確認します』と言ったきり、忘れられてしまう」といった状況では、パートナーとして頼りになりません。 年に一度しか顔を合わせない、気軽に相談できる雰囲気ではない、というのもよくある不満の一つです。
経営提案や「節税対策」への提案がない
税理士の仕事は、ただ言われた通りに申告書を作成するだけではありません。
「毎月、顧問料を払っているのに、やってくれるのは記帳代行だけ」「こちらから聞かないと、節税に関するアドバイスは一切ない」という状況では、顧問料に見合った価値を感じられないでしょう。
会社の数字を一番よく知る立場だからこそ、積極的な節税提案や経営改善のアドバイスが欲しい、と考えるのはもっともなことです。
顧問料が高い
「顧問料が、提供されるサービス内容と見合っていないのではないか」という疑問も、変更を考える大きなきっかけになります。
特に、「年に数回しかやり取りがないのに、毎月〇万円も支払っている」といったケースでは、不満が募りやすいでしょう。 料金が明確で、その金額に納得できるだけの価値を提供してくれるかどうかが大切です。
税理士が「IT・デジタル化」に対応できてない
今や、クラウド会計ソフトの導入は、業務効率化のために不可欠です。
しかし、「うちの税理士は昔ながらの紙とハンコが基本で、クラウド会計には対応してくれない…」というケースも少なくありません。 リアルタイムで経営状況を把握できなかったり、領収書の管理が煩雑になったりと、会社の成長の足かせになってしまう可能性すらあります。
特にシニア層の方だとそれを「独自のやり方」と銘打って、デジタル化に対応してもらえないケースも多くあるのです。
ケース2:「事業フェーズの変化」が理由の場合
特に大きな不満はないけれど、会社のステージが変わったことで、今の税理士では役不足だと感じ始めるケースです。 会社の成長に合わせて、税理士に求める役割も変化していきます。
創業期:「融資」や「補助金」に強いパートナーが必要!
会社を立ち上げたばかりの創業期は、何よりもまず資金繰りが重要です。 そのため、創業融資や補助金の申請に強く、事業計画の策定をサポートしてくれる税理士が頼りになります。 この時期は、比較的リーズナブルな料金で、基本的な税務をしっかり押さえてくれるパートナーがいれば十分かもしれません。
成長期:「経営・財務戦略の相談相手」が必要!
売上が順調に伸び、従業員も増えてくると、経営の課題はより複雑になります。 年商が1億円を超え、さらなる成長を目指す段階では、単なる税務の専門家ではなく、財務戦略や節税対策、組織再編まで見据えたアドバイスができる経営パートナーが必要です。 「会社は大きくなったけれど、税理士からの提案は創業期と変わらない」と感じるなら、変更を検討すべきサインかもしれません。特に、従業員の増加に伴う労務管理や社会保険手続きなど、組織が複雑化するタイミングでの税理士選びについては、別の記事で詳しく解説しています。

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「事業承継の相談をしたいが、今の先生は専門外のようだ」といった不安があれば、それは会社の未来のために新しいパートナーを探すべきタイミングと言えるでしょう。
会社の未来を託せる「税理士の選び方」のコツ
税理士を変更する理由が明確になったら、次は「どんな税理士を選ぶか」というステップに進みます。
二度と同じ失敗を繰り返さないために、そして会社の未来を安心して託せるパートナーを見つけるために、以下の3つの視点を持ちましょう。
①:まずは“これまでの悩み”を選定基準に!
最も重要なのは、前回の変更理由を、次の税理士選びの「譲れない基準」にすることです。 不満点を裏返すことで、貴社だけのチェックリストが出来上がります。
- コミュニケーションに不満があった → 連絡手段(電話、メール、チャットなど)や返信の目安、面談の頻度などを具体的に確認する。
- 提案力に不満があった → 顧問契約に“節税シミュレーション”や”経営相談”が含まれているか、具体的なサービス範囲を確認する。
- IT対応に不満があった → 対応しているクラウド会計ソフトや、ITツールを活用した業務効率化の提案が可能かを確認する。
このように、過去の「不満」を未来への「基準」に変えることで、次のパートナー選びの軸がぶれなくなります!
②:守りだけでなく“攻めの視点”があるかを見極める!
これからの税理士には、税金の計算や申告といった「守りの税務」だけでなく、会社の成長を後押しする「攻めの経営」の視点が求められます。 ただ受け身で依頼を待つのではなく、会社の未来を一緒に考え、積極的に関与してくれるパートナーかどうかを見極めましょう。
例えば、毎月の試算表をもとに経営上の課題を指摘してくれたり、活用できそうな融資や補助金の情報をタイムリーに提供してくれたり、といった動きです。
「どうすれば、この会社はもっと良くなるか」という視点を持ち、経営者の伴走者となってくれる税理士こそ、未来を託すにふさわしいパートナーです。
見極めのための具体的な質問リスト
新しい税理士候補との面談は、お互いの相性を見極める絶好の機会です。 その際に、以下のような質問を投げかけることで、事務所の方針や対応力を具体的に知ることができます。
- 質問①:「担当予定者との面談は可能ですか?」 :実際に自社を担当してくれる人がどんな人柄で、どれくらいの経験があるのかを確認します。事務所全体の教育体制やフォロー体制を推し量ることもできます。
- 質問②:「納付額の事前連絡はしてもらえますか?」 :納税額を事前に、余裕を持って知らせてもらえるかは、資金繰りを安定させる上で非常に重要です。このプロセスが仕組み化されているかを確認しましょう。
- 質問③:「税務調査ではこちらの味方をしてくれますか?」 万が一の税務調査の際に、納税者の側に立って、毅然とした態度で交渉してくれるかどうかは重要なポイントです。追徴課税を最小限に抑えるための交渉力や姿勢を確認しましょう。
- 質問④:「銀行融資の相談ものってもらえますか?」 資金調達に関するアドバイスや、金融機関とのやり取りをサポートしてくれるか。会社の成長に不可欠な資金繰りの相談ができるかは、大きな判断基準になります。
- 質問⑤:「節税のし過ぎは良くないって本当ですか?」 :この質問への回答から、税理士の節税に対するスタンスや、リスク管理のバランス感覚を測ることができます。目先の利益だけでなく、長期的な視点を持っているかどうかが分かります。
- 質問⑥:「決算申告の他にしてくれることってありますか?」 申告業務以外に、どんな付加価値を提供してくれるのかをストレートに聞いてみましょう。「経営レポートを作成します」「補助金の申請をサポートします」といった具体的な答えが返ってくる事務所は、「攻め」の支援が期待できる可能性が高いです。
新しい税理士を決めた後の、円満な契約解消コミュニケーション
新しい税理士が決まれば、いよいよ現在の税理士との契約を解消するステップに入ります。 長年の付き合いがあると、どうしても「申し訳ない」という気持ちが先に立ちがちですが、感情的にならず、ビジネスライクに、しかし敬意を持って進めることが大切です。
心構え:「お別れ」ではなく「未来のための卒業」と捉える
まず大切なのは、メンタルの持ち方です。 税理士の変更は、決して「裏切り」ではありません。 会社の未来を考えた上での、前向きで戦略的な「経営判断」です。 「今までお世話になった先生の元を卒業し、次のステージへ進む」という意識を持つことで、心理的な負担はかなり軽くなるはずです。 税理士側もプロですから、企業の成長に伴って必要なサポートが変わることは理解しています。
実践:感謝と未来の展望を伝える3ステップ
具体的な伝え方としては、以下の3つのステップを踏むと、角が立たずにスムーズに進められます。
- 感謝を伝える 何よりもまず、これまでのサポートに対する感謝の気持ちを、誠意を持って伝えましょう。「先生には〇年間、本当にお世話になり、感謝しています」という言葉から始めることで、相手も話を聞く姿勢になります。
- 理由を前向きに説明する 次に、契約を解消する理由を伝えます。このとき、不満を直接ぶつけるのは避けましょう。「会社の方針として、今後はクラウド会計を全面的に導入することになりまして」「事業拡大に伴い、IPOに強い税理士法人にお願いすることにしました」など、あくまで会社の状況変化を理由とした、前向きな説明を心がけます。
- 協力のお願い 最後に、後任の税理士へのスムーズな引き継ぎに協力してほしい旨を、丁寧にお願いします。「後任の者への引き継ぎに関しまして、ご協力いただけますと幸いです」と伝えることで、相手のプロフェッショナルとしての自尊心にも配慮できます。
注意点:避けるべきNGワードとタイミング
円満な解消のために、いくつか注意すべき点があります。
- 直接的な批判は避ける:「先生のレスポンスが遅くて…」といった不満をストレートに伝えるのは、トラブルの元です。もし理由を問われた場合は、「親族が税理士になったので」といった、角の立ちにくい方便を使うのも一つの手です。
- 毅然とした態度で:言い訳がましくなったり、話を長引かせたりすると、かえって不信感を招きます。感謝と理由は簡潔に伝え、交渉の余地はないという姿勢をはっきりと示しましょう。
- 期日を明確にする:「今月いっぱいで契約を終了させていただきます」など、契約終了日を明確に伝えます。口頭で伝えた後は、必ずメールなどの書面でも通知し、「言った・言わない」のトラブルを防ぎましょう。
- タイミングに配慮する:決算直前などの繁忙期に切り出すのは避けるのがマナーです。契約書に「解約通知は〇ヶ月前まで」といった定めがあれば、それに従いましょう。
- 伝える相手を選ぶ:担当者がいる事務所でも、契約に関する重要な話は、所長税理士本人に直接伝えるのが筋です。
これらのポイントを押さえ、最後まで誠意ある対応を心がければ、きっと円満な関係のまま、次のステップへと進むことができるでしょう。
まとめ:税理士変更は「会社の未来」を創る経営判断!
ここまで、税理士変更を考える理由の整理から、新しいパートナーの選び方、そして円満な契約解消の方法まで、具体的なステップを解説してきました。
税理士変更のタイミングに、万能の正解はありません。決算後という一般的なセオリーはありますが、最も大切なのは、あなたの会社が今、何を必要としているのかを客観的に見極めることです。もし現状のサービスに不満があり、会社の成長の足かせになっていると感じるなら、先延ばしにせず行動を起こすべきなのかもしれません。
- 税理士変更のタイミングに、唯一の正解はない
- 変更理由は「不満解消」か「事業成長」か、まず自己分析する
- 過去の不満を「未来の基準」に変え、次のパートナーを選ぶ
- 「守り」だけでなく「攻め」の視点を持つ税理士か見極める
- 現在の税理士には、感謝と敬意を持って円満な解消を
税理士の変更は、単なるコスト削減や不満の解消が目的ではありません。会社の未来を真剣に考え、その成長を加速させるための、極めて重要な「戦略的投資」です。この決断が、あなたの会社を新たなステージへと引き上げる、大きな一歩となるはずです。
もし、新しい税理士選びに迷ったり、客観的なアドバイスが欲しかったりする場合には、一度専門家に相談してみるのも良いでしょう。 私たちイデア総研税理士法人では、初回60分間の無料相談を承っております。あなたの会社の未来にとって、最善の選択ができるよう、私たちが全力でサポートします!